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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年8月23日

※これは作者の日記ではないことを明言させて頂きます。又、登場人物、又は作者が完全に狂った場合、連載を終了とさせていただきます。ご了承ください。

8月23日(火)

 あれは確か火曜日の深夜だったか。だから水曜日の日記に書いてもいい事柄だ。

 私は深夜、外を出歩いていた。田舎の深夜は通行人がほぼ皆無なので安心して出歩くことができる。しかしその日は、安心できないようなものと出くわした。それは猿だった。野性の猿か、と思ったが、ずいぶん前に動物園から猿が逃げ出したというニュースをテレビで見たことを思い出した。猿と目が合った私は、歩みが止まった。猿も動きを止めた。しばらく睨み合った私と猿は、数分間静止していただろうか。双方とも、どちらからとも無く視線を外し、それぞれ別の方向へ歩み去った。通報したほうがよかったのかもしれないが、深夜だし、私は狂っているし、それは無理だ。


 帰るとメールが届いていた。「はじめまして。猿です」で文面が始まっている上に匿名だったのですぐに削除した。どうも最近、不審な人々に私のメールアドレスが駄々漏れしている気がする。何か嫌なことの前兆でなければ良いのだが。


 昼間、一人部屋でじっとしていると、自分がすごく罪深い人間であるような気がしてきた。なので、自分に罰を与えたほうがいいのではないか、と思い立ち。しかし有効な方法がすぐに思い浮かばなかったので、壁に頭をぶつけてみた。ごん、と大きな音がした。家中に音が響き渡ったに違いない。しかし、在宅で通訳の仕事をしている母から咎められたりすることは無かった。ずっと無視されているのだ、当たり前だ。私はもう期待もされていないのだ、当たり前だ。死んだほうがいい、と思った。しかし、死ぬ勇気が出なかった。保留である。駄目だ。私はダメだ。


 また匿名のメールが届いていた。「昨日は楽しいデートでしたね」と書かれていた。昨日、誰かに会ったか、と思い返してみたが、ドン・キホーテで姿を見せずに私の背後を付け回した人物しか思い浮かばなかった。あれがデートだと言える頭があるなら、その人物は十分狂っている。私より狂っているかもしれない。そういえば明日は病院へ行く日だ。病院へ行って狂いを治療するのである。もう二年くらい通っているが、ただ薬を処方されるだけで、一向に狂った頭が改善される兆候は見られない。あの病院はヤブなのではないか、と私は少し思っている。


 昨日書き忘れたが、私は背後を姿を見せずに付いて来る謎の人物に、一言だけ声をかけられた。「あなたはきっと治らない」と一声。その言葉には十分な説得力が会った。自分でも自分の狂いが治るとは思えなかったからだ。そんな些細なことは覚えているのに、今日の夕食は覚えていなかった。キノコを口にしたことだけは覚えているのに、献立は思い出せない。


 それと言うのも、ついさっき、冷蔵庫から酒を勝手に奪って飲んだからだ。数分前まで、私はいい気分になっていた。その拍子に晩に何を食べたのかを忘れた。だから今日の日記は時系列がとっちらかっている。明日はちゃんと書こう。読み返したときに意味不明では困るから。


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