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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
88/366

2011年11月10日

※この話は作者の日記ではありません。

11月10日(木)

 仮説が浮かんだので、実践してみることにした。仮説と言ってもそれはもう簡単なもので、あの操作をやったらまた同じことが起こるんじゃないか、という仮説である。なので私は実践してみた。パソコンの文字入力機能の「ツール」から「プロパティ」を選択し、「プロパティの設定を規定値に戻す」をクリックした。何かが起こった気配はなかったが、母が私を呼ぶ声が聞こえた。ふれあいサロンへ連れて行かれる間際にこの操作を行ったのだ。


 ふれあいサロンでは、以前働き始めたことを自慢げに語っていた男は来ていなかった。人が話しているのを本を読みながら聞いたところ、仕事が忙しくなった、らしい。きっと木曜日に清掃のシフトが入れられたのだろう。それは幸福なことだろうか。私は当人ではないので分からない。何もやることのないサロンで、そんな話を聞いていたので、「このキノコ人間が。」を読むという作業はあまり進まなかった。


 帰ってくると榎本なごみが表れた。チャイムを押して玄関に現れたのである。「初めまして」と彼女は言った。どうやら仮説は真実で、パソコンの文字入力設定を規定値に戻すと私にかかわる人間の環境もリセットされるらしい。メカニズムは分からない。そんなことを考えている私を前に、榎本なごみは首をかしげた。


 そのまま榎本なごみは晩餐に同席した。家族は驚くほどフレンドリーに榎本なごみを受け入れた。榎本なごみとはいったい何者なのか。昨日はまともに言葉を交わしてくれた家族に尋ねてみたが、答えは返ってこなかった。私は晩餐に交じっていた味のないキノコを口に入れ、気絶するほどの狂いが始まったのを自覚した。

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