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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
86/366

2011年11月8日

※この作品は作者の日記ではありません。

11月8日(火)

 郵便受けを覗くのは私の役割ではない。しかし、今日はなんとなく郵便受けを覗いてみた。すると一通だけ私宛の荷物が届いていた。それだけを持ち、残りは郵便受けの中に放置して部屋に戻った。荷物は手紙にしては分厚く、それ以外のものとしては一つしか思い当る大きさのものがなく、その思い当るものとはハードカバーの本だった。封を解いてみると、それはやはりハードカバーの本だった。表紙には大きなゴシック体で「このキノコ人間が。」と書かれていた。作者は猿で、訳者の欄には母の名が書かれていた。いったい母は猿の何を翻訳したというのだろう。それにしても、タイトルである。私がこの前読んだ「このキノコ人間が、」の「、」が「。」に変わっただけである。こんなにも似偏ったタイトルの本を出してもいいものだろうか。それともこの本は「このキノコ人間が、」の続編なのだろうか。そんなもの、読んでみなければわからない。なので読み終えてから考えることにした。


 しかし読書とインターネットばかりの日々にいい加減嫌気がさしていたので、少しは気が晴れることを期待して金はないが外を歩いてみることにした。やはり平日なだけあって、人の姿は少ない。それ故、すれ違う人間の一人一人が印象に残りやすい。私がすれ違う相手にしても然り、だろう。今日は学校をさぼっている風の小学生くらいの男とすれ違った。相手は私をすれ違いざまに凝視していた。私はどう思われたのだろう。きっと不審者と見られたに違いない。狂った人間は不審者に見られがちである。


 帰ってきたら来客があった。扉を開くと「初めまして」と来客が言った。しかしそれは榎本なごみだった。「どうして私の名前を知っているんですか? あてずっぽうで当てたとしたら、それはすごいことですよ」私も榎本なごみの態度を不審に思った。どうして関係がリセットされてしまったのだろう。


 晩餐の席で生姜とキノコのスープが出された。その汁を飲んだだけで、私は昏倒した。そして深夜に目を覚ました。机に突っ伏したまま目を覚ました時、主菜は片づけられていたが、スープのカップだけはそのままだった。今日は狂いの発作が激しい。そういえば、昨日はキノコを食べていなかったような気がする。一日抜いただけで、狂いに対する耐性は落ちてしまうものなのだろうか。以前はそんなことはなかったはずだ。どうしてなのか。

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