2011年11月6日
※この作品はフィクションです。ですってば。
11月6日(日)
想像力が、創造力が湧いてこない。小説を書こうとしただけで私の気力は枯渇してしまったらしい。だから今日は書かないことにする。と決めていたら、パソコンの調子が悪くなった。変換機能が狂って、漢字に変換しようとしているのに半角カタカナに変換されてしまい、そのまま勝手に確定されてしまう。人の狂いは電子機器にも感染してしまうものなのだろうか。
だから今日はパソコンを閉じてひたすら小説を読んだ。「私とカエルについて」内での二人はつかず離れずの距離を保ったまま中盤まで差し掛かった。しかしやっぱりパソコンの調子が気になるのでもう一度文字を入力してみたが、結果は同じで、やはり半角カタカナで確定されてしまう。神が文章を書くなとでも言っているのだろうか。
どうしてもパソコンの異常動作が気にかかってしまい、とてもワードを開いていることなどできない。仕方がないので登場人物たちには頭の中で動いてもらい、それを手書きで書き記しておくことにした。榎本なごみに似せた女の登場人物が男の登場人物に唐突に殺されそうになった。いったいどうした。錯乱でもしたのか。
晩餐の席でパソコンの異常について母に話していると、そこに父が食いついてきた。父と話すのは何か月ぶりになるだろう。「見せてみなさい」と父が言うので、私はパソコンを父に見せた。「箱はないのか」と父は問うてきた。そういえば榎本なごみが持ってきたパソコンは箱に入っていた。父はそれを探った。するとサポートセンターの電話番号が記されていた紙が発見された。「明日、電話してみなさい」父は言った。父はそんなにパソコンが好きだったか。頭の中を探ってみたが、今まで私にそんなそぶりを見せたことはなかった。新発見である。