2011年10月30日
※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・建物とは一切関係ありません。
10月30日(日)
今日は八回トイレに行った。うち三回は吐くためである。気温が下がってきたせいか、胃が飲んだ水を戻そうとばかりしている。もちろん吐くものは水ばかりである。そのうち晩餐も吐くようになるのだろうか。そうなったら私は栄養失調に陥って死ぬ。でも家族にとって、それは良いことなのかもしれない。父と妹は相変わらず私を無視し続けている。
朝、起きると家族が出かけていた。家に誰もいなかったし、靴も私のものしか置かれておらず、鍵もかけられていたので、家族が私を置いて出かけたことは確実である。この前は動物園だったから今回は近所のイオンモールあたりかな、と予測を立ててみる。家の近所には、田舎らしく非常に巨大なショッピングモールがあるのだ。そのショッピングモールの周辺は田んぼが取り巻いている。田んぼの中に突如現れる近代的なショッピングモールの姿は、とても違和感がある。しかし地方のショッピングモールは巨大なものと相場が決まっているようで、千葉も埼玉も熊本もショッピングモールは大きいらしい。逆に東京のものは小さいらしい。これらはすべて、インターネットで仕入れた情報である。私の情報源は新聞とテレビとインターネットしかない。普通か。
昼ごろ、チャイムが鳴ったので私は玄関の鍵を開けた。家族はまだ帰ってきていない。扉を開けると、そこには榎本なごみが立っていた。立っているだけで入ってこない。榎本なごみは私に触れた。「今日は、見えるんですね」榎本なごみは相変わらず口調が一定しない人物である。私の妄想の産物だからかもしれない。妄想の産物だから、設定が気分によって変わるのだ。
榎本なごみはすぐに帰り、その直後に家族が戻ってきたので、私は鍵を閉めた。勝手に鍵を開けたことが知れたら怒られるかも知れなかったからだ。母は晩に、お土産、と称して食卓に宝楽饅頭とキノコのソテーを並べた。宝楽饅頭とは東京では今川焼と称される宮崎特有の和菓子である。あんこが皮も破れよとばかりに詰め込まれているため、一個一個が重く、二個も食べれば満腹になる。それでも食卓には三個並べられていたので、私はそれを三個腹に詰め込み、さらにキノコのソテーも食べた。そして狂った。まるで狂うのが義務であるかのように、私はキノコを食べたのだった。