表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
77/366

2011年10月30日

※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・建物とは一切関係ありません。

10月30日(日)

 今日は八回トイレに行った。うち三回は吐くためである。気温が下がってきたせいか、胃が飲んだ水を戻そうとばかりしている。もちろん吐くものは水ばかりである。そのうち晩餐も吐くようになるのだろうか。そうなったら私は栄養失調に陥って死ぬ。でも家族にとって、それは良いことなのかもしれない。父と妹は相変わらず私を無視し続けている。


 朝、起きると家族が出かけていた。家に誰もいなかったし、靴も私のものしか置かれておらず、鍵もかけられていたので、家族が私を置いて出かけたことは確実である。この前は動物園だったから今回は近所のイオンモールあたりかな、と予測を立ててみる。家の近所には、田舎らしく非常に巨大なショッピングモールがあるのだ。そのショッピングモールの周辺は田んぼが取り巻いている。田んぼの中に突如現れる近代的なショッピングモールの姿は、とても違和感がある。しかし地方のショッピングモールは巨大なものと相場が決まっているようで、千葉も埼玉も熊本もショッピングモールは大きいらしい。逆に東京のものは小さいらしい。これらはすべて、インターネットで仕入れた情報である。私の情報源は新聞とテレビとインターネットしかない。普通か。


 昼ごろ、チャイムが鳴ったので私は玄関の鍵を開けた。家族はまだ帰ってきていない。扉を開けると、そこには榎本なごみが立っていた。立っているだけで入ってこない。榎本なごみは私に触れた。「今日は、見えるんですね」榎本なごみは相変わらず口調が一定しない人物である。私の妄想の産物だからかもしれない。妄想の産物だから、設定が気分によって変わるのだ。


 榎本なごみはすぐに帰り、その直後に家族が戻ってきたので、私は鍵を閉めた。勝手に鍵を開けたことが知れたら怒られるかも知れなかったからだ。母は晩に、お土産、と称して食卓に宝楽饅頭とキノコのソテーを並べた。宝楽饅頭とは東京では今川焼と称される宮崎特有の和菓子である。あんこが皮も破れよとばかりに詰め込まれているため、一個一個が重く、二個も食べれば満腹になる。それでも食卓には三個並べられていたので、私はそれを三個腹に詰め込み、さらにキノコのソテーも食べた。そして狂った。まるで狂うのが義務であるかのように、私はキノコを食べたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ