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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
73/366

2011年10月26日

※この作品はフィクションであり、現実とは一切の関係を持ちません。

10月26日(水)

 今日は病院へ行かなくてもいい水曜日である。病院へ行くのは隔週なので、今週の水曜日は自由、というわけだ。なので気が緩んだ私は午後まで眠りこけてしまったが、それは仕方のないことなのである。最近朝から晩まで寝てばかりで、ろくに図書館から借りた本を読めていない気がするので、少し気合を入れて本を読んでみることにした。猿というペンネームの作家が書いた「このキノコ人間が、」という本である。


 読み進めていくにつれ、体がだるくなってきた。まるでアルコールを体に入れたときのような脱力感が襲ってきた。最近本を読まなかったせいで変な疲労感に襲われているんだろうか、と思いつつ、水を求めて台所へ行き、麦茶でも取ろうかと(これは酒と違って勝手に飲んでも怒られない)冷蔵庫を開けると、そこには缶ビールが四本ほど入っていた。たった四本なので、一本でもなくなれば確実に無くなったという事実は露呈してしまうだろう。だから私はこれを盗み飲むべきではない。


 それから二十分後、私は外を歩いていた。足はふらついていた。久々にアルコールを体に入れたせいである。そして缶ビールを勝手に飲んだ私は、逃避行を開始していた。逃避行と言っても近所をふらつく程度のことしかできなかった。家に帰れなくなるほど遠くへ行ってしまうと、私はきっと餓死してしまうに違いない。そんな気がした。きっと私がいなくなっても探したりしないだろう、私に冷たい私の家族は。


 逃避行は夜まで続いた。というか夜までしか続かなかった。アルコールのせいで歩くのがつらくなって、夜には家に戻ってしまったのである。案の定、缶ビールを勝手に消費したことは母にばれており、今日は夕食を抜かれた。だから今日はあの味のない食べると気の狂うキノコは食べていない。それでも、いつも晩餐を食べ終えるころになると、いつもの癖でベッドに寝転がった。すると天井になめくじが張り付いていた。無事だったのか。「九死に一生を得ましたよ」昨日のなめくじであることが自分でもわかることが不思議だった。

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