2011年10月25日
※この作品はフィクションであり、作者の生活とは一切の関係がありません。
10月25日(火)
今は秋、それも冬の迫った秋のはずである。それなのに窓を閉じていると暑くて、暑さのあまり目を覚ましてしまった。体中汗をかいていたので、シャワーを浴びることにして、階下に降りて、浴室に入った。すると一匹のなめくじが私を出迎えた。「あ、すいませんが蛇口ひねってもらえますかね。私、手がないもんで」なめくじは温水を浴びても平気なものなのだろうか。「私のようなもんにとって水分は命の源ですからね」それから私となめくじはシャワーから放出される湯を浴びた。なめくじは、心持ち、気持ちよさそうに見えたが、なめくじに顔と呼べる部位など存在しないので、私が狂った頭で勝手にそう思っただけなのだろう。
それから、本に取り掛かった。今日は読書くらいしかやることがないのである。しかしなかなか集中できなかった。昨日の夢に雑誌が出てきたことから、体が雑誌を求めているのかもしれない。そう思ったので私は外に出て、本屋へ向かった。本屋までは家から2キロ歩かなければならなかった。秋にしては暑い気候が、喉から水分を奪ったが、私にはお金がないのだ。本屋でテレビブロスという雑誌を読んでみたが、知らない人間が充実した現状をフランクな口調で語っていたので、私はなぜか腹が立った。どうして知らない人間の日常なんか知らなければならないのだ。こんなにも人を不快にしてしまう日記および現状報告の文章をどこにも公開していない私は正しい。
晩餐を食べていると、母が塩を瓶ごと持って食卓から出ていき、すぐに戻ってきた。どうしたのか、と訊いてみると、「風呂場になめくじが出た」と帰ってきた。母はなめくじが嫌いだったのか。まあ、不思議なことではない。テレビでなめくじ撃退用品のCMをやっているのを見たこともあるし、なめくじというものは基本的に人に嫌われるものなのだろう。私と一緒だ。