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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年8月21日

※これは作者の日記ではないことを明言させて頂きます。又、登場人物、又は作者が完全に狂った場合、連載を終了とさせていただきます。ご了承ください。

8月21日(日)

 ふと思い立ち、ヤフー知恵袋に「味の無いキノコって存在しますか」と書き込んでみたが、反応が怖いので書き込んで以来まだそのページを開けずにいる。これは狂っているのではなく、単に私が元来臆病なだけである。そしてこのまま放置し、忘れかけた頃に除いてみて何の反応も返ってきていないことに少しだけ落胆し、また「私は狂っている」などとこの日記に書くのだろう。だから私はこの書き込みを自分の記憶から消すことに決めた。


 今日は日曜日であり、外に出ると人の往来が平日より激しく、つまり狂っている私を奇異の目で見る眼球の数が増えるのである。だから私は外に出ないことに決め、本を開いた。しかし集中できなかったので、座禅でも組んでみることにした。あまりにもくだらない行為である。しかし私にはもう、くだらないことくらいしかやることが無いのだ。そして座禅は十分足らずで挫折した。あまりにも頭が静かになって狂いが加速しそうになったからだ。文字や動画や音楽といった刺激を常に与え続けていなければ狂うような気がして、読書やインターネットを中断するのが怖い。まるで怠け者の言い訳である。


 「お話したいことがあります。来週月曜日にバイパス下のドン・キホーテに来てください」試しに何も見ずに木曜のメールの文面を思い出してみたところ、ほぼ完璧に記憶できていたので自分でも驚いた。明日はドン・キホーテに行ってみよう、と昨日より精神の調子がいい私は決断してみた。しかしこの決断も明日の朝には鈍っているかもしれない。


 それにしても、ここまで書いたものを読み返してみると、今日の私はまるで正気のようである。ということは、当たり前だが私は狂っていないということになり、狂っていないのに働いていない私はただのカスということになる。いや、狂っているから働けないなどと言っている奴もカスである。つまり私はカス呼ばわりされる運命から逃れられない、ということになるのか。こんなこと、とてもインターネットに書き込んだりなどできない。ただの泣き言じゃないか。


 夕食は饗された。しかし母親はまだ私のことを無視し続けている。夕食に出たのは塩鯖だった。キノコはどこへ行ったのか、と思ったら小鉢にキノコが入っているものが鯖の隣に置かれていた。食べなかったら今度はどうなるんだろう、と考えながら、私はおとなしく出されたキノコを食べた。やはり味は感じられなかった。


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