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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年10月17日

※この日記は作者の生活とは何の関係もありませんし、思想や経験とも何の関係もありませんってば。

10月17日(月)

 月曜日なので図書館は休みである。世の中には月曜日でも休まない図書館があるという。そんな東京に行きたい、と切に思う。しかし私一人で東京に引っ越す権利も金銭も家にはない。旅行で図書館へ行っても貸し出しなど行えない。第一、図書館というものはその土地に住んでいる人間以外には基本的に貸し出さないものである。と思っていたら池袋にある図書館はどこに住んでいる人間にも図書を貸出しするらしい。憧れる。それにしても今日は図書館が休みである。昨日一日で読み終えてしまった作家の猿の「動物園のメリーゴーランド」を返却しに行くことができない。


 ふと思い出し、ハローワークへ行くことにした。今日は私の担当者になってしまった不幸な中年女性の出勤日である、ということを急に思い出したのだ。しかし、特にこれと言ってやりたい仕事の目処は立っていない。それでも私は図書館へ行った。そして少し、仕事について担当者の中年女性と話した。特に実のない話を。それから、一応履歴書をもらった。しかしこれを書くとして、仕事を辞めてから現在までの空白の期間をどう書けばいいのだろう。それから、特技やアピールポイントの欄をどう書けばいいのだろう。部屋で履歴書を眺めながらそんなことを考えているうちに、自分には働く気がないことに気が付いた。ニートが身に沁みついてしまったようだ。もっと積極的に行動しなければ、さらにこの症状は悪化し、きっと狂いも加速するだろう。なので行動しよう。活動しよう。今日はもうよるなので明日から。


 一応ハローワークで紹介された仕事を、覚えている限りざっと書き出してみる。ビルの清掃員。アパートの廊下の清掃員。パソコンの文字入力。動物園の清掃員。清掃員ばかりである。狂っている人間は人と話さなくてもいい肉体労働に精を出せ、ほかに使い道なんかないからな、そういうわけなのだろうか。そうか。私は体力には自信がない。仕事をやっていた時も毎朝息切れしながら出勤していた。


 ところで私は、狂う前はどんな仕事をしていただろう? 思い出そうとしてみたが、思い出すことができなかった。私の頭がおかしくなっているのか、それとももしかしたら私には働いた経験などなく、最初から(どこの?)狂っていて、自分が働いていたと錯覚しているだけなのだろうか。分からない。分からないことが日に日に増えていく。これがなくなったとき、私は完全にくるっているか、正気に戻っている。

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