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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年10月15日

※この日記はフィクションであり、登場する物や人は実在のものではありません。

10月15日(土)

 今日はいきなり晩餐の席での話である。たまには時系列がバラバラの日記を書きたい時だってある。私が晩餐を摂っていると、母が誰かと電話をしていた。どうやら相手は出版社の誰かであるようだった。「はい。榎本さんが? ええ」などと心配そうなトーンで話していたので、何があったのですかと尋ねてみると、母の担当編集者が色々分け合って代わることになった、と私に教えてくれた。昨日の電話で、今日まで母の担当であった編集者は錯乱している様子だった。首にでもなったのだろうか。そこまでは教えてもらえなかった。


 それにしても週末である。今週は、振り返ってみると榎本なごみが現れなかったような気がする。読み返してみればどこかで会っているような記憶が呼び起されるのかもしれないが、今週は酒に阿呆のように浸っていたという記憶の方が大きいので、榎本なごみと何らかの形で会っていたとしても、その印象が頭に残っていない。記憶を残留させない作用があるのだ、アルコールというものには。


 昼間、メーラーを開いてみると、猿からの返信が届いていた。「私は珍しい天才なので、かなり大きな組織を動かすこともできます。特定の個人のメールアドレスを調べ上げることも可能なのです」とのことだった。自分のことを天才と称する人間にろくな奴はいないと決まっているものだが、相手は猿かもしれない。もしこのメールをサルが打っていたとしたら、確かにタイピングができてメール送信ができる猿など珍しい天才である。だからこのメールの内容は間違っていないかもしれない。どう返したものか分からなかったので、さらなる返信はしなかった。


 晩餐の席での記憶が、今日はもう一つある。母ではなく榎本なごみが同席していた。私が食べている席の正面の椅子に、榎本なごみが座っているのだ。あなたは本当に榎本なごみか、と尋ねてみると、「ええ、そうですよ」と彼女は答えた。母はどうしたんだ、と続けて尋ねてみると、「さあ、いないみたいですけど?」と首を傾げられた。そうか。私の狂いは進行しているらしい。

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