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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年10月14日

※この作品は私の日記ではありません。こんなこと、実際には起こり得ません。

10月14日(金)

 昨日から酒を飲まないように気を付けているが、これが意外と依存していたようで、今私はとてもつらい状態にある。このままだと飲んでしまう可能性があるので、必死で日記に集中している。インターネットでの調べによると、狂った人間や不安神経症の人間は酒にアルコール依存になりやすいのだそうだ。やはりアルコールには不安を和らげる効果があるからなのだろう。病院で処方されている薬にそんな効果があればいいのだが。現在病院で処方されているエビリファイなどという効果のうっすらとした薬にはちっとも不安を和らげる効果がないように思えてならない。遅効性の薬なんだろうか。だとしたらそんな物作るべきではないんじゃないだろうか。薬が効き始める前に即効性のアルコールに手を出してしまうじゃないか。それにしても今飲みたい。今は深夜だ。家族は既に寝ている。今なら台所へ行って冷蔵庫から酒を取り出すことができる。今飲みたい。


 でも結局飲んでいない。まだ狂いきっていないから我慢が出来ているのだ、と思う。完全に狂ったら、私は自制というものがきっとできなくなってしまうだろう。そして酒を盗み飲みしまくってアルコール中毒で死ぬのである。うちの家族に狂っているうえにアルコール中毒な奴を病院に入れてくれる優しさがあるとは思えない。いや、私に家族愛が向けられていないだけか。狂ってるもんな。働いてないもんな。母や父や妹は狂人に対して偏見を持っているのだろうか。私は持っていると思う。今日現在の私は、うちの家族は狂人に対して偏見を持っていると思う。


 今日は珍しく二日連続でメーラーを開いた。すると小説の感想を送った猿からの再返信が来ていた。「面白がっていただけ多様で、うれしいです」と書かれていた。どうして私なんかを相手取ってかしこまっているのだろう。私は狂っているのだ。小説なんか書く正常さも持ち合わせていないのだ。それなのに、下手に出られている。もしかしたら馬鹿にされているのかもしれない。ところでどうして私のメールアドレスを知っているのか。と、私はまたメールに書いて返信してみた。まるで猿がメル友になったかのようである。返信が来るのは明日だろう。私が次にメーラーを開くのは翌日の予定だから。


 それから、電話が来た。いつものように母が出ないので、私が出てみると編集者からだった。編集者は錯乱している様子だった。「大変だ! 猿先生は猿だったんだ!」言っていることが良くわからない。それを私に伝えてどうするつもりなのか。私ではなく母にそれを報告したかったのだとしても、どうしてそうしたいのか分からない。「僕はどうすればいいんだ! 猿なんかを馬鹿みたいに尊敬しちまって! ああ恥ずかしい!」恥らうのは個人の自由である。しかしそれを私に伝えてどうしようというのだ。本当に。あと今日もキノコを食べた。

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