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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年8月20日

※これは作者の日記ではないことを明言させて頂きます。又、登場人物、又は作者が完全に狂った場合、連載を終了とさせていただきます。ご了承ください。

8月20日(土)

 昨日の「時計仕掛けのオレンジ」で図書館から借りた本を全て読み終わってしまった。読む本がなくなるということは、インターネットしかやることがないということであり、インターネットしかやることがないということはインターネット内のふとした書き込みが気になって気分が沈んでしまう危険性が増えるということであり、それを避けるためには私は図書館へ行かなければならなかった。私に本を買う経済力など無い。狂った人間にお小遣いを渡すような親も私の家にはいない。親の財布は鍵のかかる化粧箪笥の引き出しの中に入れられてしまっていた。週末は外に人の目が増えるので外出は避けたい、と昨日書いたが、仕方がないので目を伏せながら家を出た。


 そして自転車に乗って図書館を目指した。母と兼用の、錆び落としが欠かせない十年以上使っている自転車である。自転車は好きではない。周囲の景色が流れるのが早すぎて混乱してしまうし、何より転ぶとほぼ確実に怪我をしてしまうからだ。しかも死なない程度の怪我だ。車に轢かれて死ぬよりつらい目に遭うことになる。だから自転車は好きではない。乗れなかったらよかったのに、と思うのだが、幼稚園児の頃、まだ両親が私に期待していた頃に、私は練習してしまい、自転車が乗れるようになってしまった。だから仕方なく自転車を使って、本を返却して新たに数冊の本を借りた。カウンター越しの相手なら声を出すのは平気だ。このあたり、私がまだ正気を保っているような気がしてほっとする。


 「お話したいことがあります。来週月曜日にバイパス下のドン・キホーテに来てください」木曜日にパソコンに入っていた匿名のメールがまだ記憶から消えない。メールマガジン以外のメールが届くことは稀だからだ。いや、初めてだったかもしれない。私はパソコンを使っていてよかったと思えたことがまだ一度も無い。それなのに、毎日パソコンを開いている。そしてインターネットを覗いている。あまり楽しい趣味ではない。でも、他にやることが無い。楽しくなる方法を検索すればインターネットは楽しくなるだろうか。


 今日の晩餐は焼きそばだった。それなのにまたキノコが入っていた。どうしてキノコが入っているんですか、と私は母親に敬語で尋ねてみた。母親は私のことを無視した。ついに私は家族全員から無視されるようになったのだ。ついに、などという言葉を使ったところで嬉しくもなんとも無い。


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