2011年10月8日
※この作品はフィクションであり、作者の日記ではありません。
10月8日(土)
今日は図書館へ出かけた。母には調べるなと言われたが、私は菌類大辞典という本を探した。やはりどうしても「マザー」という名のキノコが気になったからだ。そして菌類大辞典と言う本は見つかった。誰も本棚から取り出してなどいなかった。私は索引で「マザー」を探した。存在しなかった。ページをめくって確認してみた。やはり見つけられなかった。
図書館では榎本なごみと編集者と出会った。編集者は私を視界に入れたが、さすがに人前ではやらない主義らしく、編集者は私に何の暴行もしてこなかった。榎本なごみと編集者は、仲がいい風でも家族と言って風でも険悪と言った風でもない距離感を保ったまま並んで立ち、私の前に現れた。一体何の目的があって私の前に現れるんだ、と私は私の幻覚かもしれない二人に、声に出して訊ねてみた。二人は何も答えなかった。あれは狂った頭が見せた厳格だったのかもしれない。いや、きっと厳格だったに違いない。二人は何もせず、ただ私を見て立っていたのだ。それなのに、周囲からは注目されていなかったのだ。
晩餐前に、デスクトップに知らぬ間に置かれていた「マザー」というタイトルの文書ファイルを開いてみた。それによると、「マザー」というキノコを人に摂取させ続けることで、その人間は認識を勘違いし続け、誰かに依存せずにはいられなくさせる。主に依存相手が母親になることから、子供を子離れさせたくない親が使用することがよくあるため、「マザー」と言う名がつけられている、とのことだった。しかし図書館の菌類大辞典にはそんな名前のキノコは載っていない。それに私を子離れさせないでいても、母は負担が増える一方だろう。私のことを邪険に扱っているし、きっとこの文書に書かれていることは間違っている。それか、私の認識が間違っている。