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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年10月7日

※この作品はフィクションであり、登場する人物・団体・事件とは一切関係ございません。

10月7日(金)

 ほとんどすべてが荒らされた部屋の中で、パソコンだけは無事だった。前回は編集者にパソコンを壊されたというのに、今回の編集者はどんな心変わりがあったのだろう。それとも、一度手を付けたものには二度手を付けない、などという個人的なルールでもあるんだろうか。とにかくノートパソコンは無事だった。編集者と同じ名前の、榎本なごみという人間からもらったノートパソコンだけは平気だったのだ。


 パソコンを立ち上げてみると、「マザー」という文書ファイルがデスクトップに作られていた。そんなもの、作った覚えはなかった。誰かが作ったとしたら、編集者か。きっとろくなことが書いてあるわけがない。そう考えた私は、そのファイルを無視することにした。削除はしなかった。今後、読みたくなるかもしれなかったからだ。私は編集者に興味がない、わけではない。あいつは一体何なんだ、という疑問は頭の中にいつものこっている。


 そんな疑問が残る頭の中の、残りの大半は吐き気に支配されていて、今日も吐いた。確か三回くらい吐いたと思う。三回のうち二回は胃液しか出なかった。残りの一回は飲んだばかりの酒が出た。部屋を荒らされるという惨事が起こったのだ、飲まずにやってなどいられなかった。でも酒のせいで胃が荒れているようで、ずっと胃もたれにも似た腹の重さが治まらない。それでも飲まずにはいられない。私は新しい死因を作っている最中なのかもしれない。狂い死になんて世の中的に認められたものではない、もっとまともな、社会的に認知されている死因を作っている最中なのかもしれない。


 胃が荒れていたので晩餐を口に入れるのも一苦労だった。それでも絶食が続くと吐き気が収まらない気がしたので無理して食べた。胃が荒れているのにカレーだった。キノコはルーにみじん切りになって入っていた。それから、晩餐後、狂う前に思い切ってパソコンのデスクトップ上の「マザー」というファイルを開いてみた。「1.キノコ人間の作り方について」から始まる、長い文章が続いていたが、そこまで見たところで狂ってしまったので、残りは覚えていない。

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