2011年10月1日
※これは作者の日記ではなく、フィクションです。
10月1日(土)
今日は朝に目が覚めたのだが、起きると寒かった。冷たい空気を大きく吸い込むと、吐き気がこみ上げてきた。私の胃は弱くなっているのかもしれない。何が原因なんだろう、最近飲んだ酒のせいだろうか、と思いながらトイレに行って、便座に向けて腰を曲げてみた。しかし吐けなかった。昨晩飲んだキノコもとっくに消化してしまっているだろうし、今更吐いたって胃液しかでないだろうことは分かっていた。それでも吐き気は引かなかった。
昼ごろ、屋内が暖かくなるとともに、吐き気は引いて行った。と同時に、榎本なごみが訪ねてきた。そしていつものように私と榎本なごみは居間に入ったのだが、そこへいつもは榎本なごみが来ている間は部屋でずっと仕事をしている母が部屋から出て、居間に入ってきて、榎本なごみと顔を合わせた。初対面である。初対面のはずである。母は榎本なごみに向かって、「あら、榎本さん、来てたんですね」と言って、水を飲んで部屋に戻っていった。私は榎本なごみに、何も訊ねなかった。怖かったから何も訊ねなかった。あの編集者と榎本なごみが何らかの関係性を持っているかもしれないことを、想像するだけで恐ろしかった。恐ろしさのあまり、私は今日榎本なごみと話した内容を忘れた。今思い出そうとしても思い出せない。
それなのに、母は晩餐の席で言った。「榎本さんがあんたを訪ねるなんて、珍しいわね」と。私はきっと狂っているのだ、だから母がそんなことを言っているように聞こえるのだ。私はそう決めつけて、晩餐に混ざっていたキノコを掻き込むように口に入れた。そして飲み込んだ。そして部屋に戻って狂ってそれが少し正気に戻って、今これを書いているのだが、本当に何者なんだ、榎本なごみという少女は。榎本なごみという編集者は。