2011年9月20日
※この作品は作者の日記ではなく完全にフィクションです。そうに決まっています。
9月20日(火)
我が家には私の部屋と母の部屋にそれぞれパソコンがあって、私の部屋のパソコンは私がまだ狂っていなかったときに買ってもらったものだ。このパソコンが壊れたらきっと買い換えてなどもらえないだろう。そして一日の大部分の時間が今よりもっと空虚なものになってしまうだろう。パソコンはいずれ壊れる。ほかの電化製品より早く壊れる。私はそれを恐れている。毎日緊張しながら慎重にパソコンに触れている。
そんなパソコンが今日、異常動作を起こした。インターネットブラウザが立ち上がらなくなったのだ。これでは検索ができない。インターネットで「マザー」を検索できない。
不安。空虚。嫌な静寂。に襲われた私は、台所の冷蔵庫から酒を盗み飲んだ。そして酔った私は、自転車を駆けていた。空は曇っていた。行先は図書館だった。図書館で植物辞典を開き、「マザー」について調べるつもりだった。
しかし図書館では、植物辞典がすべて本棚から消えていた。持ち出し禁止なので貸し出し中ということはないのだが、誰かがどこかの席で開いているのだ。仕方がないので私は全然興味のない女性作家のエッセイを読みながら植物辞典が本棚に戻るのを待った。エッセイには女性の本音が書かれていてどうでもよかった。あと酔いが回っていたため内容はあまり頭に入ってこなかった。それでもどうでもよかったことが思い出せるくらいだから、相当どうでもいいことが書いてあったに違いない。
結局、閉館時間まで粘ってみても、植物辞典が本棚に戻ってくることはなかった。一体どこのどいつがこんなに大量に植物辞典を開いているんだ、と腹を立てながら、私は思った。「マザー」はキノコである。キノコは菌類だ。植物辞典に載っているのだろうか。確かめたかったが閉館時間になったので図書館から出なければならなかった。
晩餐にいつものように「マザー」が出た。食べた。夜になってもまだ酔いの余韻が残っていた。酔って狂って、私は気持ちが悪くなった。しかし吐かなかった。トイレに行ってみたが、吐けなかった。