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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
354/366

2012年8月2日

※この作品は作者の日記ではありません。

8月2日(木)

 世間は夏休みのようだが、宮崎は田舎であり、田舎は夏休みに入っても静かなままである。自室で本を読んでいても聞こえてくるのは時折近所を通りかかるバイクや自動車の廃棄音場なりで、あまりにも静かなので気が狂ってしまいそうである。ちなみに夜はそんなに静かではない。虫が鳴くからだ。この虫はときおり家に入ってくるのでとても怖い。


 そう言えば今年はセミの鳴き声をあまり聞かない気がする。田舎なのに、宮崎なのに、である。以前父と住んでいた一軒家では夏になるとうるさいくらいセミの声が聞こえてきた。もちろんセミの声と言っても口から出している声ではなく羽根をこすり合わせて鳴らしていることくらい知っている。小学生の知識を未だに忘れていない私は狂っているのだろうか。さっきも、気が狂いそう、という表現を使ったことだし。九州がフィクション化したらしい現在、狂っていることによって得られるメリットとはなんだろうか。いや、そもそも狂っていること自体がデメリットなはずである。


 そんなことより小説を書かなければ、とパソコンを開こうとするとちょうどいいところで邪魔が入った。電話が鳴ったのである。母は外に遊びに出ているので私が出ると百合心音からの電話だった。「やっぱりあなたは、現実の世界にいるみたいね」どういうことなのだろうか。九州は既にフィクション化しているのではなかったのか。「あなたは今、現実世界にいます」しかし母はフィクション化された世界をエンジョイしているようである。「職場に来なさい」上司の命令なら仕方がない。小説を書く事を今日は諦め、職場に向かった。すると職場の建物はそこにいつものように建っていた。いつものようにボロくさい。そしていつもの階まで階段を上ると、そこに職場はなかった。百合心音だけが何もないテナント募集中みたいな空間の中にぽつねんと立っていて、「ここは火曜日だけフィクション化した世界とつながります」と言った。いや、母もフィクション化しているぞ。私は反論した。

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