2012年7月27日
※この作品は作者の日記ではありません。
7月27日(金)
小学生の頃、何年生の頃だったのかは忘れたが、運動会で一年生が「あひるサンバ」を踊らされているのを見て悲しくなった。せっかく彼らは庇護される立場である幼稚園児から少しは自立が許される小学生という立場になったというのに、未だ「可愛いこと」を強制されているのだ、と考えると、思わず涙がこぼれそうになった。強制的にアイドルをやらされているのだ。こんなに悲しいことはない。
気づくと私は榎本なごみの家で寝ていた。キノコのせいで倒れていたのだ。「道端で倒れていたんだよ」榎本なごみは私の額にタオルを載せていた。熱がある様子は無いのに。しかし体の各所が痛かった。アスファルトの上で倒れた影響だろう。助けてくれたことはありがたかったので、私は榎本なごみに例を述べた。「まあ、珍しい」珍しいだろうか。しかし、これが榎本なごみに言った初めての礼かもしれない。
「どうする? 帰る?」榎本なごみは変なことを尋ねてきた。帰るに決まっている。「家の人、フィクション化してるのに?」そういえば、母が異様に明るくなっていた。フィクション化の影響だとでも言いたいのだろうか。そういえば、今週はまだ病院に行っていない。行っていないことを指摘すらされていない。これもフィクション化の影響だろうか。「私とあなただけが、この世界で正常なんだよ」そうは思えなかった。だって昨日の朝だって母との会話は成立していたのだから。「そりゃあ、家族は気を使ってくれるよ」気を使えばフィクション化しても現実のままの人間と話ができる、とでも言うのだろうか。