表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
34/366

2011年9月17日

※この作品は作者の日記ではありません。実在の人物・団体・組織名とは一切の関係がありません。

9月17日(土)

 今日は週末であり狂っていない人間が大挙して外に出歩いているので外へ出たくなどなかったが、借りていた図書の返却期限が来ていたので、図書館に出かけないわけにはいかなかった。外に出ることも自転車に乗ることも好きではないが、図書館は嫌いではない、人がうるさくないからだ。と思っていたのに、図書館へ到着すると、一人の狂人が暴れていた。図書の返却期限が過ぎていることを注意されたのがきっかけで、図書館員に文句をつけ始め、それがエスカレートしたらしい。私はそそくさと図書を返却して図書館を出た。そして狂人がいなくなるまで家で待機しようと思い、一旦家に帰ることにした。


 家に帰ると電話がかかってきた。今日も母は電話に応対しなかった。なので私が出てみると、やはり榎本なごみからだった。母は榎本なごみからかかってくる電話を察知することができる特殊能力でも有しているのだろうか。などと考えながら、榎本なごみと少し話した。その際、頭狂というものについて知っているか、と尋ねてみた。二日前に編集者から言われた言葉だ。「すいません、知りませんねえ」と返された。謝られたのなんて何年ぶりだろう。


 図書館へ戻ると狂人の姿は消えていた。まるで最初から狂人など来ていなかったかのような雰囲気だった。それが不気味でなんとなく気持ち悪かったが、本を何冊か選んで借りた。私は図書館員に文句をつけたりしなかった。そうする理由がないからだ。しかし、私は狂っているから、図書館員になんらかの因縁でもつけるべきではないだろうか、と変な義務感に少しだけ駆られた。しかし図書館を出入り禁止にされたら本を調達する手段が無くなってしまうので、そうはしなかった。もしかしたら私はもう狂っていないのかもしれない。


 そして晩、食事に混ざっていたキノコを食べると、私はあっけなく狂った。そういえば私以外の家族に饗される食事にはキノコは入っているだろうか。母に尋ねてみた。「入れるわけないじゃない、狂うわよ」どうやら母は私だけを狂わせたいらしかった。その真意は分からない。なぜならキノコを食べて狂ったからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ