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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
338/366

2012年7月17日

※この作品は作者の日記ではありません。

7月17日(火)

 とても小説が書きたい気分になった。これは今日が仕事日であり小説が書けないからそう考えてしまうのだろうか。だとしたら私の思考は相当穿っている。狂っている。いや、母親に小言を言われそうなタイミングで宿題をやりたくなる、という子供心と直結しているのかもしれない。だとしたら私は狂っているのではなく、成長していないだけ、ということになる。どちらにせよ異常である。


 小説を書きたかったが仕方がないので仕事場へ向かう。家へ砂粒程度の生活費を入れるためなのだから仕方がない。それと私の家での居場所を確保するための手段でもある。とはいえ仕事には生産性らしきものが少しも感じられなかった。これは一体何の書類で、私は一体何のデータをエクセルに入力しているのか? 「さて、九州のフィクション化についての進捗状況だけど」こっちが仕事中だというのに百合心音は自分の机のディスプレイから顔を上げて言った。「もうじき、あなたの周囲にフィクション化された人間、つまり人間らしい非人間が現れ始めると思います。楽しみに待っていてね」それって希穂や清人や鬼灯や榎本なごみやキノコ人間のことだろうか、と手を挙げて発言してみると、「あなたの周辺は、フィクション化が進んでいるようですね。良い」と、異様な褒められ方をした。「いずれあなたもフィクション化しますよ。そうすれば仕事なんてことを考えなくても良くなります」それって生きてるって言えるのだろうか。


 晩餐時に以上のようなことがあったことを母に伝えると、「そうなったら私の商売はどうなるのかしらね」と母がつぶやいた。「私は海外小説を翻訳してるじゃない、世界が小説みたいにフィクションになったら、フィクションである小説の存在価値なんてなくなってしまう。恐ろしいわ」母は世界が小説化しようとしていることを信じているのだろうか。「大人だって妄想くらいするのよ」母は私のことを大人だと思っていないということが判明した。

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