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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
325/366

2012年7月4日

※この作品は作者の日記ではありません。

7月4日(水)

 冷蔵庫に缶コーヒーがあった。しかもブラックだ。朝、眠かったので試しに飲んでみたら、なんとなく眠気が覚めたような、しかしまだ眠いような不思議な感覚に陥った。脳の奥底だけはまだ眠りの中にあって、ただ瞼だけが上がっている、そんな感じだった。そしてコーヒーを盗ったことはすぐにバレて叱られた。さすがに酒と違ってひと缶失くなっていれば冷蔵庫の中身に鈍感な母でも気づくようである。


 罰としてスーパーへの買出しを命じられた。持たされた金額には一銭の遊びもなかった。余計なものを買うことを一切禁じられたのである。私が働いた分の給料もこうして母の財布に入ってしまうと考えると労働意欲が萎える。物語化された世界、への興味のみでなんとか働けている状態である。そして希穂と清人の二人は相変わらず私の家に居座っていて、私の罰に同行した。二人はスーパーでの思い思いの買い物を楽しんでいる様子だった。学生という設定なのに、学校に行かなくていいのだろうか。「行っていたら、そろそろ期末ですね」希穂は言った。「書いてくださいよ、小説内の季節がいつなのか」そういえば、小説ではどの季節の出来事なのかを描写していなかった。とりあえず夏休みということにしておこう。


 ところでいつまで我が家に居座る気なのか、と二人に尋ねてみた。二人は口を揃えて「どこか泊まれるところがあれば、いつでも出ていく」と言った。五十万とか三十万とかいう金を持っていればビジネスホテルあたりでかなりの期間宿泊できるだろうに。「それだってお金には限りがあるわけだから、まだ出て行くわけにはいかない」ずっと居られる居場所を探しているらしかった。とりあえず、明日、榎本なごみを探して泊めてもらえるよう頼んでみよう。いつまでも我が家に居座られると狭苦しくてかなわないし、榎本なごみだって私の妄想から派生して生まれた人物なのだから、私の頼みくらい聞いてくれるだろう。

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