2012年6月28日
※この作品は作者の日記ではありません。
6月28日(木)
私の人生が現在のところ上向きか下向きかと問われれば、私は下向きであると答える。下向きであるとしか答えられない。何しろ狂っている上に無職なのだ、これは後ろ向きな考えにならざるを得ない。それでも今の状況を無理やりにでも前向きに捉えろと命令されれば、長い人生の長い休憩に入っているのだ、と答えることになるが、こんなにも長期間休憩をとっていたら人生を上向きに修正しようとするだけで人生の残りの時間を使い切ってしまいそうである、と後ろ向きにならざるを得ない。
小説を書いた。6日の続きである。吸血鬼の男と死神の女は病室で隣り合ったベッドで寝こんでいた。二人とも一命を取り留めたのである。そこへ幽霊の鬼灯が見舞いに来る。幽霊なので怪我という概念も死ぬという現象も無いのだ。鬼灯は死神の女・希穂には果物の詰め合わせを渡し、吸血鬼の男・清人には大福を手渡す。大福を食べた吸血鬼の男はそれをのどに詰まらせて少しの間苦しむが、すぐに飲み込むことに成功する。「あれ、おかしいな」と鬼灯はつぶやく。「致死量のはずなのに」どうやら大福は毒入りだったらしい。しかし、自分の体は勝手に毒を分解して無害化してしまうのだ、と清人は自分の体質を説明する。そして鬼灯に尋ねる、どうして自分を殺そうとするのか、と。鬼灯は答える。自分の母を殺したのがお前だからだ、と。すると清人は頭を下げる。あっさり謝られて、鬼灯は戸惑う。その人、いい人なんだよ、と希穂は鬼灯に声をかける。かばうなんて、彼のことが好きなのか、と鬼灯は言ってしまう。吸血鬼の男に声が届くところで。というところまで書いた。二人の怪我の原因は、確か鬼灯が計画した故意の爆発事故だったはずである、と、読み返すのが面倒な自分になってしまった時のためにここで補足しておく。
非情な医師に反抗するように薬を一気に水で飲んで、あれ、これって医師に従ってるじゃないか、酒で飲まないなんて。まあいいや、とにかく私は小説を書いたことによる疲労と充足で倒れそうになっていた。倒れてはいけないという決まりはなかったので、私は布団に潜り込んだ。すると直ぐに眠った。そして目覚めると夕方になりかかっていた。こんな生活をとっていてもキノコを食べると気絶して眠ってしまうのである。酒による睡眠は気絶と同種である、と聞く。この知識は以前書いたような気がする。一旦気にし始めるとどれも以前に書いたことがあるような気がして、私は日記を読み返し始めた。