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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
312/366

2012年6月21日

※この作品は作者の日記ではありません。

6月21日(木)

 朝。死神の少女である希穂、吸血鬼の少年である清人、幽霊である鬼灯と宮崎駅で待ち合わせていると……改めて字面を見てみるとなんだろう、この書き出しは。まるでフィクションである。しかし私が今こうして書いているのは歴とした日記であり、自分が体験したことをそのまま書き記しているだけだ。まあ多少盛ったり現実逃避したりもするけれど、とにかく少年と少女と幽霊と一緒に車を待っていたことは真実である。唯一のこの日記の読者である未来の私に向けて念を押しておくが、これは現実逃避のために虚構を書いているのではない。


 そうして待っていると、ロータリーにワゴン車が現れて私たちの目の前で停まり、百合心音が顔を出した。「かなり時間がかかるから、車内は広いほうがいいでしょう?」そしてこのワゴン車はレンタカーであることも私たちに説明した。そんな気を使っていただかなくてもいいのに。しかしせっかく金銭を支払ってもらってワゴン車をレンタルしてもらったのだから、私たちは遠慮することなくワゴン車に乗り込んだ。私が助手席を担当した。運転席はもちろん唯一の免許取得者である百合心音であり、希穂と清人と鬼灯は後部座席二列に三人で座った。年齢順で楽じゃない席に座らされている形になる。これは不自然じゃないのか、と私は抗議したくなったが、最も抗議すべき一番苦労する運転席に座っている百合心音が何も言わなかったので私も何も言わなかった。


 車が走り出してから、私たちが乗ったのが乗用車でなくワゴン車であることの有り難みが分かった。宮崎から脱出するのにはとにかく時間がかかるのである。まず宮崎自動車道へ熊本へ、そこで九州自動車道と合流して福岡へ、そして福岡に到着して数時間は知ってようやく関門海峡を渡ることができる。こうして書くだけなら一分もかからないことなのだが、実際移動するとなるとものすごく時間がかかる。福岡に到着するまで六時間かかり、百合心音の体力的理由で私たちは福岡で一泊することになった。「それに、フィクション化された世界に私たちみたいな現実のままの人間が入ることは、かなりの危険を伴うから」と、百合心音は私にだけ話した。死神と吸血鬼と幽霊は物語化された世界に入っても特に負荷を感じたりはしないのだろう。羨ましい話である。


 私たちはビジネスホテルに三部屋取り、私はなぜか鬼灯と同じ部屋をあてがわれた。なぜ幽霊と相部屋になったのかは百合心音が明かしてくれなかったのでなぞのままだったが、とにかく私は乗車疲れのため、チェックインするなりベッドに倒れて昨日の不眠を取り戻すように泥のように寝てしまった。そして深夜に目覚めてこれを書いている。明日はついに山口入りである。しかしこんなペースで来週の火曜日までに宮崎に帰れるのだろうか。不安は募る。

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