表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
304/366

2012年6月13日

※この作品は作者の日記ではありません。

6月13日(水)

 今日は病院へ行かなければならない日である。しかし今日は朝から調子が悪かった。調子が悪いというか気持ちが悪いというか、起きてから断続的な吐き気に襲われ続けていた。歩きながらなんども嘔吐く。ところが口から出てくるのは胃液のかわりの生唾ばかりである。「謎の彼女X」の卜部美琴は嬉しすぎることが起こると生唾が口から溢れてしまうらしいが、実際に溢れる生唾はそんなハッピーなものではないと思う。ところでどうして金もなければ本も買えない私が「謎の彼女X」という漫画のキャラクターについて知っているのかと言えば、妹の部屋から失敬したからである。そんな妹も明日で退院となる。漫画は元の位置にちゃんと戻しておかなければならない。


 診察はいつもの如く5分で終了した。今日は待ち時間はいつもと違った。いつもは40分くらい待たされるところを、今回は60分待たされたのである。私の前に親子連れが診察室に入っていって、先に子が出てきて、親が医師とずいぶん長いこと話していた。親というものは身勝手だと思う。後ろで待っている人間のことなど少しも気に止めてくれない。


 それから薬局に寄って家に帰り、母に尋ねてみた。そういえば母が現在翻訳している五十年前の海外小説はどこの出版社から発売されるのか? 「陽子社よ」という答えが帰ってきた。それも聞いたことがない会社だった。まあ私は海外翻訳小説を出版している会社に詳しいわけではないので、それが実在する会社なのかそれとも物語化された本州に置かれている会社なのか判断することは出来なかったが。それにしても、本州に行ってみたい。物語化された世界、というものがどんなものなのか、地に足をつけて感じてみたい。しかし私の現在の経済力、発言力では宮崎から出ることすら難しい。うちに本州に住んでいる親戚はいないだろうか。と、母に尋ねてみた。「居るわよ、東京に、私の姉さんの旦那さんのお兄さんが」遠い、あまりにも遠い親戚である。しかも母の姉の旦那は十年以上前に死んでいる。とてもコンタクトなど取る気にはなれない。どうにかならないものかなあ。などと考えながら、私は晩餐が出来上がるのを待った。今日は晩餐が遅かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ