2012年6月13日
※この作品は作者の日記ではありません。
6月13日(水)
今日は病院へ行かなければならない日である。しかし今日は朝から調子が悪かった。調子が悪いというか気持ちが悪いというか、起きてから断続的な吐き気に襲われ続けていた。歩きながらなんども嘔吐く。ところが口から出てくるのは胃液のかわりの生唾ばかりである。「謎の彼女X」の卜部美琴は嬉しすぎることが起こると生唾が口から溢れてしまうらしいが、実際に溢れる生唾はそんなハッピーなものではないと思う。ところでどうして金もなければ本も買えない私が「謎の彼女X」という漫画のキャラクターについて知っているのかと言えば、妹の部屋から失敬したからである。そんな妹も明日で退院となる。漫画は元の位置にちゃんと戻しておかなければならない。
診察はいつもの如く5分で終了した。今日は待ち時間はいつもと違った。いつもは40分くらい待たされるところを、今回は60分待たされたのである。私の前に親子連れが診察室に入っていって、先に子が出てきて、親が医師とずいぶん長いこと話していた。親というものは身勝手だと思う。後ろで待っている人間のことなど少しも気に止めてくれない。
それから薬局に寄って家に帰り、母に尋ねてみた。そういえば母が現在翻訳している五十年前の海外小説はどこの出版社から発売されるのか? 「陽子社よ」という答えが帰ってきた。それも聞いたことがない会社だった。まあ私は海外翻訳小説を出版している会社に詳しいわけではないので、それが実在する会社なのかそれとも物語化された本州に置かれている会社なのか判断することは出来なかったが。それにしても、本州に行ってみたい。物語化された世界、というものがどんなものなのか、地に足をつけて感じてみたい。しかし私の現在の経済力、発言力では宮崎から出ることすら難しい。うちに本州に住んでいる親戚はいないだろうか。と、母に尋ねてみた。「居るわよ、東京に、私の姉さんの旦那さんのお兄さんが」遠い、あまりにも遠い親戚である。しかも母の姉の旦那は十年以上前に死んでいる。とてもコンタクトなど取る気にはなれない。どうにかならないものかなあ。などと考えながら、私は晩餐が出来上がるのを待った。今日は晩餐が遅かった。