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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年8月17日

※これは作者の日記ではないことを明言させて頂きます。又、登場人物、又は作者が完全に狂った場合、連載を終了とさせていただきます。ご了承ください。


8月17日(水)

 今日は外に出た。ということは、昨日は家から出なかった、ということだ。昨日の日記が家庭内の事情の描写に終始していたのはそのためである。ともかく今日は外に出た。しかも日中である。狂った奴が日中に出歩くと善意の普通の人と視線が衝突して酷い目に遭う。そうに決まっている。と覚悟を決めていたかもしれない。私が住んでいたのが都会であったのならば。しかし私が住んでいるのは宮崎県という行けども行けども田舎が続く土地であるため、平日の日中に外に出ても人と会うことは少ない。この点に関してだけは、宮崎と言う土地に感謝している。しかしきっと近所での私の評判はすこぶる悪いに違いない。だって狂ってばかりで稼いでいないのだから。近所の普通の人から話を聞いたわけではないが、そう思われているに決まっている。


 宮崎という田舎であっても、コンビニくらい存在する。ちなみに宮崎にローソンが来たのは90年代末である。田舎だ。実に田舎だ。悪いことは言わない、田舎暮らしなんかに憧れないほうがいい。といっても狂った人間の忠告など誰も聞かないか。それにしても誰に見せるつもりも無いのに、私は誰に忠告しているんだ。エア友達か。ともかく私は家から出て、コンビニに入った。そしてコンビニに入ってしまうと、酒のコーナーに向かってしまった。そして親の財布から抜き取った百円玉を使って酒を買ってしまった。飲んでしまった。そしてコンビニを出て三十歩歩き、吐いた。酒に関わるといつもこうだ。今度からは飲まないように気をつけなければならない。


 宮崎という田舎の平日でも、たまに人とすれ違う。今日は一人とすれ違った。その人はすれ違いざまに私に視線を向けた。寝癖を見たのだろうか、それとも狂った人間が珍しいのだろうか。私のように誰が見ても狂っていると分かる人間は、珍しいに違いない。都会だったらきっと、狂った人間が数多く闊歩しているだろうから、私が特別に視線を向けられることなく済んだだろう。田舎が憎い。都会が羨ましい。田舎で死にたくない。都会の雑踏の中で死にたい。そしてきっと、「こんな街中で死ぬんじゃねえ」と悪態をつかれるのだ。それでも田舎で死ぬよりずっといい。


 昨日に続いて今日も晩餐は丼ものだった。親子丼だ。鶏肉がささみしか使われておらず、しかも硬い。狂った人間には豪華すぎる食事である。卵と鶏肉と玉ねぎのほかに、キノコが入っていた。味は無かった。昨日のキノコと同じキノコだ。

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