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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
295/366

2012年6月4日

※この作品は作者の日記ではありません。

6月4日(月)

 自分は何でも出来る、きっと傑作を仕上げることができる、などといった超人妄想から目覚めると昼だった。目覚めたのは朝である。私の脳は狂い始めてからだんだん機能がおかしな方向に向かってしまっている気がする。それも狂っているから当たり前なのか。それが狂っているということなのか。こんなにおかしな頭を持っている私でも、障害者とは認定されていない。世の中間違っている。私より脳がまともな障害者なんていくらでもいるのに。いや、脳がまともじゃない障害者は人前に出てこないから実態を知ることができないだけなのかもしれない。


 目覚めてしばらく経つと父が来た。昨日は日曜日だったのだからその時に来ればよかったのに、と思ったが、どうやら父の様子を観察するに、妹の在宅を警戒しているらしい。前回このマンションに来た時にアイロンを投げつけられたことがトラウマになっているらしいのだ。母と話している際もしきりに妹の部屋の入口を気にしていた。あそこから妹の手がにょっきりと出てきてアイロンを投げつけてくるのではないか、という被害妄想に陥っていたようだ。ちなみに私のことは空気同然と見倣していた。母と話す父を観察していても全く気にされなかった。そしてそんな父と、母は寄りを戻すつもりなのだろうか。ずいぶん明るいトーンで喋っていた。編集者のことはもういいのか。仕事のことはもういいのか。そんな恋人同士みたいなノリで離婚した二人がまたくっついてもいいものなのか。


 まあとりあえず、そのことは私がやらなければならないこととは関係がなかったので気にせず晩餐の時間になって父が帰るまで気楽に観察を続けた。観察など続けずに小説を書くべきだった、と気づいたのはこの日記を書き始める直前である。ちなみに妹はまだ帰ってきていない。学校には行ったはずである。いや、行っていないのかもしれない。確かめていないのでわからない。とりあえず妹は死んでるなんてことはないだろう、そんなことより私は自分を叱咤し、やるべきことをやらなければならない。やるべきこととはもちろん小説の執筆である。書かなければならない。でも今日も書けなかった。

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