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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
293/366

2012年6月2日

※この作品は作者の日記ではありません。

6月2日(土)

 今日は朝から図書館へ赴き、そのまま夕方まで過ごした。行きも帰りも歩きだったので多大なるカロリーを消費し晩餐前に飢えそうになったが、適度な運動でいい汗をかいたので気分は爽快である。しかし爽快になってる場合じゃない、と思う。女性編集者に求められている猿の代筆の駄作小説の締切は今年中である。今年に入ってから書き始めた小説が、六月に突入した現時点でもまだ終わる様子を見せない。このままだと年の暮れまでに書き上がらない可能性がある。いい汗をかいている暇があったら小説を書くべきである。


 そんな焦燥感で自分を鼓舞しようとしながら図書館で本を読んでいると、「お、会ったね」と榎本なごみに声をかけられた。どうやら現在の榎本なごみは図書館の常連であるらしい。結構読書もするのだろう。良いことだ。読書をしていない相手と私は会話ができるとは思っていない。なぜなら私の話題倉庫には読んだ本のことと無為な生活自慢しかないからである。今の榎本なごみならちゃんとした会話ができそうだ。しかし私に話しかけてきた榎本なごみは、「どう? あの子は」と妹の様子を尋ね、私が今のところは奇行に走ったり非行に走ったりしている様子はない、と報告すると、「そっか。じゃ、またね」と言って立ち去ってしまった。きっと本を読むのに忙しいのだろう。それか、私には一人もいない友達と会うことを優先しているとか。今の榎本なごみは私のことをそれほど重要視していないような気がしている。しかし、私のことを見捨てるような存在ではない、と私は思っているので、あまり心配はしていない。


 時系列が遡ってしまった。最初の段落では晩餐の直前まで時間が進んでいたのに、二番目の段落ではそれ以前、昼間の図書館の風景になってしまっている。こんな書き方をしているようでは面白い小説は書けない。しかし、それでいいのだ。私は面白くない小説を書く事を求められているのだ。だからさっさと適当に書き上げてしまわなければならない。明日こそは。と、この一語を書くと明日も書けないような気がしてくるので、後で消しておこうと思う。

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