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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
284/366

2012年5月24日

※この作品は作者の日記ではありません。

5月24日(木)

 今日も何事もない素晴らしい一日だった。という一行で終わる日記が世界で一番素晴らしいのではないか、と思った。それはつまり昨日も素晴らしい一日だったということであり、明日もきっと素晴らしい一日なのだろう、という希望が文字と文字の間から滲み出ている。素晴らしい日記である。私の一日はとても素晴らしいとは言えなかった。朝っぱらからゴキブリは出たし。


 父がマンションにやって来たし。学校から帰宅した妹はそんな父めがけてアイロンを投げつけるし。おかげで父は目を負傷してそのまま救急車に運ばれるし。父が消えたマンションでは娘の行為の情けなさに母が泣き出すし。「お願い、出て行って、お願いだから」と母が変な懇願をはじめるし。そしたら妹は出て行ってしまうし。そんなことがあったせいで晩餐は遅れるし。ろくな一日ではなかった。


 それでも良かったことをひとつでも探すとすれば、それは晩餐がレトルトカレーだったことだ。母は料理が下手だ。決して美味しいとは言えない料理を、味の消えるキノコ入りで毎日私に出して食えという。しかし今日は人が作ったもの、正確に言えば工場で作られたもの、つまりほとんど外食のようなものである。いつもより豪華な食事である。レトルトカレーは水っぽかったが少なくとも不味くはなかった。母の料理をまずいと表現してしまう私は罰されなければならないのだろうか。こんな個人的な日記に書いただけでも? それは恐ろしい。この日記は誰にも読まれないように慎重に保管しておかなければならない。

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