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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年9月11日

※この作品は作者の日記ではなく、完全にフィクションです。実在する人物・団体・企業とは一切の関係がありません。

9月11日(日)

 朝、テレビを見ているとプリキュアが戦っていた。宮崎はプリキュアの放送地域だったろうか、と思い、見終えてから検索してみると、放送地域ではあったが放送時間は土曜日の午前中ではなかった。私が住んでいるのは本当に宮崎なのだろうか、それとも狂ったせいで自分が住んでいるのは宮崎だと思い込んでいるだけなのだろうか。一体どんな狂い方をすれば、自分が住んでいるのが宮崎だと思い込むようになるのだろうか。


 私は宮崎について、思い入れも思い出したいことも一切無い。確かに私が生まれ、育ったのは宮崎で、宮崎から引っ越した記憶も無いのだが、その間に、墓の中に持って行きたい思い出は一切含まれていない。私の頭の中に入っているのは思い出したくないことばかりだ。宮崎という土地が私を責め苛んで狂わせた、と言っても過言ではないだろう、と私の狂った頭は考えている。郷土愛が無いのは狂っているせいだろう。それにしても今日は日記によく「狂う」という字が出てくる日だ。


 こんな日はきっと嫌なものを見てしまうだろう、と思っていたら、窓の外に猿が現れた。猿は窓の外から家の中をじっと眺めていた。入れてもらいたそうだったので、家には現在誰も居ないことだし、思い切って窓を開けてみた。すると猿はするりと家の中に入ってきた。それから猿は居間で夕方までくつろいだ。その間、私は窓を開けっぱなしにしておいた。


 去り際、猿は「あなたは正常になれますよ」と私に言葉を残した。猿が喋ることくらいで、今更驚いたりしない。何せ私はくるっているのだ、この猿は幻覚に違いない。猿の言葉も幻聴に違いない。私が正常になれるなんて、夢にも思っていない。自分が正常になった夢すら、一度も見たことが無い。


 家族は今日も姿を見せなかった。夜、冷凍食品とキノコを食べていると電話が鳴った。榎本なごみからだった。「明日、料理を作りに行ってもいいですか」とまるで私の現在の状況を知っているかのような提案をしてきた。私は承諾した。どうせ誰も私を咎めたりしないのだ。このくらいの行動、取ったところで誰も困ったりしないだろう。

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