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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
274/366

2012年5月14日

※この作品は作者の日記ではありません。

5月14日(月)

 明日は仕事であるため今日は体力を温存したいところではあるが、週にたった一度、それも三時間程度の労働のために丸一日の充電が必要かと問われれば私は口ごもる。そんなはずは一般的にはないはずだからである。だから私は母からの頼まれごとを断りきることができなかった。母に頼みとは、昨晩妹が言っていた外でゾンビが出たという話、それが本当か否かを確かめて欲しい、というものである。このままではもうすぐ中間試験だというのに妹が明日も学校に出ない可能性がある。それは我が家の将来的に考えてよろしくない。と母は言ったのである。父と復縁するんじゃなかったのか。それともこの前の話し合いで復縁の話は破談になったのか。


 とにかく私は外に出かけさせられた。とはいえどこでゾンビを見た、という話は聞いていないので当てずっぽうでゾンビを探さなければならなかった。ゾンビはどこに何体いるのか、そもそも存在しているのかすら分からない。それをこの広い宮崎の中で当てずっぽうで探せというのは酷な話である。とりあえず妹の通っている通学路周辺を歩いてみた。私も昔通っていたので通学路は把握できるのである。そしたらゾンビは見つかった。ゾンビは榎本なごみと一緒にいた。


「あ、ちょうど良かった」とゾンビと何か話し込んでいたらしい榎本なごみは私を見つけるなり声をかけてきた。そして私に近寄ってくる。ゾンビと共に。ゾンビは腐敗が進みすぎていて、服を纏っていないにもかかわらず性別すらわからない。それでいて無臭なのだからどうかしている。「キノコ、ないかな」榎本なごみはそんなことを言った。キノコというのはマザーのことだろうか。「そう、そんな感じの名前のキノコ。この子、キノコがないと動いてられないんだって」その、この子、というのはそのゾンビのことで合っているのだな? と確認を入れてみた。「そう。このゾンビの子」どうして榎本なごみがゾンビと仲良くしているのか。「気が合ったからだけど?」ゾンビと気が合う女子高生、いったいこの世界はどんな世界なんだろう。狂った人間にはちょうどいい世界なのかもしれない。


 それからゾンビは家に来た。ゾンビを見るなり母は不気味がったが(当たり前だ)、榎本なごみの説得によって、このゾンビは人に危害を与える存在ではないことを承知し、キノコも分け与えた。榎本なごみは例を述べて、ゾンビにキノコを食べさせながら玄関の扉を閉めた。一体どうしてこうなったのか? 私は答えを求めたかった。しかしそれができる相手はどこにもいなかった。

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