表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
27/366

2011年9月10日

※これは作者の日記ではなくフィクションです。日記の書き手と作者とは何の関係もありません。全く関係ありません。

9月10日(土)

 起きると母に久しぶりに話しかけられた。その内容は「これから取材旅行だから」というものだった。母は翻訳家である。翻訳家に取材旅行などと言うものが存在するのかしないのか、翻訳という職業に詳しくない私には分からなかった。もしかしたら旅行に行ったまま帰ってこないかもしれない、などという子供じみた想像で不安になりながら、私は母を送り出した。母が居なくなった家には、父も妹も居なかった。二人とも、私が寝ている間にどこかへ出かけて行ったらしい。


 冷蔵庫を覗くとそこには冷凍食品とキノコが大量に詰め込まれていた。これらの食事で凌げ、あとキノコもちゃんと食べろ、そういうことなのだろう。キノコを食べると、私の気の狂いは加速する。しかし、食べなければならない。そう言い聞かせるような視線を、母は出かけに私に向けていた、ような気がするのである。狂っているせいでそんな被害的妄想が浮かんだだけなのかもしれないが、私はキノコをちゃんと食べることにした。食べないでいると後が怖いからである。


 夜。父も妹も何の連絡も無く、帰ってこなかった。仕方が無いので冷凍食品のチャーハンを解凍し、キノコも茹でて食べた。いつぶりだろう、私が台所用品を使ったのは。狂っているくせに私は食べ終えた食器とキノコを茹でるのに使った鍋はちゃんと洗って拭いて食器棚に戻した。こんなにも正気的な行動が取れるのであれば私の狂いはやがて解消されるのかもしれない、と期待してみたが、すぐにキノコの影響が出て私は狂った。そして気がつくと、私は自分のベッドで自分に布団を巻きつけていた。狂っている間に私はどんな行動を取ったのか、それはいつものように覚えていない。母はいつ帰ってくるのだろう。父と妹はどこへ行ったのだろう。私はこのまま死ぬまで放置されるのだろうか。こうして日記なんか書いている場合だろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ