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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
269/366

2012年5月9日

※この作品は作者の日記ではありません。

5月9日(水)

 昨日の自分の一連の行動に理由を付けることができないことに、今、気がついた。それ以前の行動についてもどうしてそれをやったのかと尋ねられれば、何とも説明することができない。私は無意識の内に人に物を尋ねたり電話を取ったりキノコを食べたりしていたのか。それとも行動に後付けでも理由を付けられないことが異常なのか。社会から異常と診断されている私には難しい命題である。


 いつものように外を歩いているとキノコ人間を目にした。どうも異様なことに遭遇するときに限って意味もなく外出しているような気がする。私の頭の中には異様を感じ取る嗅覚でも搭載されているのだろうか。キノコ人間は相変わらず海パンに浅黒い筋肉を誇示するようにムキムキさせつつ片手にはビニール袋いっぱいのキノコをぶら下げていた。こんな怪しげな人物の配るキノコを受け取った母は異常である。とにかく私はキノコ人間に近づいた。「やあやあ、こんにちは。キノコ食べるか?」私が近づくなりキノコ人間はフレンドリーに話しかけてきた。私はそうではない、伝言を伝えに来たのだ。そう言って、百合心音という人物がありがとうと言っていた、と伝えた。「百合ちゃんか。最近会ってないなあ。よし、今度会いに行こう」そう言うとキノコ人間は立ち去っていった。そういえば百合心音の年齢を、私は知らない。キノコ人間の年齢は、特に知りたくもない。


 そのことを晩餐時に母に伝えた。ついでにキノコも貰っておいたほうがよかっただろうか、と問うてみた。「いいわよ、まだ足りてるから。次の機会でいいわ」次の機会を作ってキノコを受け取れということか。それにしても今日の晩餐にもキノコが含まれている。このまま黙ってキノコを食べ続けていたら、世界はどうなってしまうのだろうか。物語化するってどういうことなのだろうか。もしかしたら、何も変わらないんじゃないだろうか。

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