2012年5月7日
※この作品は作者の日記ではありません。
5月7日(月)
夢に見たキノコ人間が現実に現れた。この事例が今後も起こるとすれば、有効活用できるのではないだろうか。例えば、都合のいい夢を見てそれが具現化されて現実が都合が良くなる、とか。そう考えて昨日は都合のいい夢を見るよう念じながら眠ったのだが、残念なことに見た夢を少しも覚えていない。人間は眠れば必ず夢を見るという。夢を見ていないと感じるのは夢を見たという事実すら覚えていないのだとか。私は夢を見たことすら覚えていない。世の中は都合が悪く出来ているようだ。
是非とも会いたいわけではないが、キノコ人間を目撃できるかもしれない、と思って外をさまよい歩いていたら視界の端にきのこ人間の姿が写った。今まさに道を曲がろうとしていた。私はこっそり近づいて、キノコ人間の後ろ姿を見た。見事なブーメランパンツで、尻の割れ目が見えない絶妙な位置でそれはとどまっていた。私はそれ以上の深追いはしなかった。別にかかわり合いになりたいとか、そういうわけではなかったからだ。
晩餐の直前、電話がかかってきた。私が出ると百合心音からの電話だった。「伝言を伝えて欲しいのよ、キノコ人間に」キノコ人間というのが正式名称なのか。「ええ、そうよ。架空から現れた存在だからね、名前も架空の産物に近いの。伝えて欲しい内容はね、キノコをありがとうって」それを、今度キノコ人間に会った時に伝えればいいのだろうか。「ええ、そうよ」私としては少しもありがたいとは思えなかったが、上司からの頼みだったので私はそれを断らなかった。