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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
254/366

2012年4月24日

※この作品は作者の日記ではありません。

4月24日(火)

 昨晩あれほど不安がっていたというのにいざ出勤となると心が座ってしまうものだ。不穏なほどの平穏を抱えながら私は自転車に乗っていた。午後である。仕事は午後から始まり夕方には終わる。あたってくる風は今日は肌寒かった。曇っていたのである。近頃は相当暖かくなっていたにもかかわらず、今日に限って冬に戻ったかのような肌寒さだった。二回くしゃみが出た。


 仕事先には百合心音と名乗る人物がいた。私を担当する上司という立場にである。もしや意味不明であるが真実かもしれないと疑ってしまった電話をかけてきたのはあなたか、と尋ねそうになったが、それは出来なかった。到着するなり直ちに仕事が始まったからである。タイムカードを押すと私に仕事が手渡された。活字が書かれた資料である。これをワードで書き写すのが私の仕事である。最初から活字なのだからこれをコピーすればいいのではないか、と思ったが、そうでもないのだろう、きっと。仕事というのはそういうものだ。


 3時間の仕事を終えて帰ると母が晩餐を用意していた。曇っていたが故に外は暗くなっていた。「どうだった、仕事は」母が尋ねた。特にこれといったトラブルは起こらなかった、と答えると、母は満足そうだった。晩餐にはキノコが混じっていた。働き始めたのにまだ私はキノコを食べなければならないのか。確か母が私にキノコを食べさせ続ける理由は、私を狂わせ続けて福祉を途切れさせないためであったはずである。働き始めたのだからもう狂い続ける必要はないのではないだろうか。「働き始めたから狂ってない、って思われたら困るでしょ」なんという話か。ぐうの音しか出ない。仕方なく私はキノコを食べた。

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