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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
25/366

2011年9月8日

※これは作者の日記ではなく、フィクションです。作者又は主人公が完全に狂った場合、連載は終了させていただきます。ご了承の上、作品をご覧ください。

9月8日(木)

 あれは何日前だったか。今日は日記を読み返すのが面倒な気分なために正確に確かめることはしないが、榎本なごみは「私、住んでないから」と発言した。あれは一体どういうことなのだろう。住んでない? ホームレスだって道端に住んでいる。ホームレスでない人間は家に住んでいる。住んでいない、とは、一体どのような状況なのだろう。などと考えていたら、榎本なごみが家に来た。母が応対しなかったので私が応対したところ、玄関先に居たのは榎本なごみだったのだ。


 部屋に上がってきた榎本なごみに相談してみた。狂った人間でも仕事をすることは可能なのか。そして質問している最中、ハローワークの狂人担当窓口の私の担当者の出勤日が明日であることを思い出した。あと、榎本なごみの私の質問に対する答えはこうだった。「人間には、可能なことと不可能なことがあります。信じていれば夢は叶う、だなんて、卑怯な言葉だと思いませんか? まるで人間に無限の可能性があるみたいじゃないですか」意味が分からなかったので、私はそうかと答えた。


 二人揃ってもやるべきことは特に無かったので、それぞれ別の本を読書して過ごした。私はおかゆまさきという作家の本を読んだ。ものすごい文体の本だった。ものすごく、頭が悪いことを追求した文体の本だった。頭が悪い文章を書くことも、出版することも、正気ではきっとできないだろう。この作家もこの作家の作品を認めた編集者も、この本を購入した図書館も狂っているのかもしれない。私も作家にならなれるのかもしれない。「信じていれば夢は叶う、だなんて、卑怯な言葉だと思いませんか」榎本なごみがさっきと同じことを口にした。


 榎本なごみは夕方には家を後にした。そして夜になり、晩餐には、珍しく凝った料理が饗された。餃子である。キノコが入っているのかどうかは、中の具が細かく刻まれすぎているので分からなかった。あの狂いの原因と思われるキノコは味が無いのだ、みじん切りにされたら全く分からない。でもきっと入っていたのだろう。あのキノコを母が私に食べさせないとはとても思えない。ところで、どうして母は私にキノコを食べさせたがるのだろう。家族が狂った人間になって、何の得があるというのだろう。狂った頭ではそれを想像することができなかった。なので、考えないことにした。

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