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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
244/366

2012年4月14日

※この作品は作者の日記ではありません。

4月14日(土)

 図書館へ行こうとドアを開けると榎本なごみと鉢合わせた。昨日の電話で行っていたことは本当だったらしい。図書の貸出期間は二週間であり、返却日まであと一週間の猶予があったので榎本なごみの言っていた人生ゲームに付き合うことにした。私の部屋へ二人で戻る。こんな場面を家族に目撃されたくない、と私は思った。恐らく声で私の部屋に自分以外の人間がいることくらいばれるだろうが、それでも入っていく場面を目撃されることは心苦しい。働きもせずに人と遊び呆けている、と思われるかもしれないからだ。


 人生ゲームを三回戦行なったが、三回とも私はフリーターになった。一体どう運が悪ければこんな結末になってしまうのだろうか。「結婚も出来なかったしね」もしかしてこれは私の将来への暗示だろうか。最近読んだ西村賢太の苦役列車が思い出される。読んでいて重苦しさはあまり感じないが、主人公の置かれている境遇は間違いなく重苦しい、そんな物語である。「ま、たかがゲームで落ち込むことないって」世の中は落ち込む材料に満ち溢れている。たかがゲームであっても、である。たかがゲームに馬鹿にされているような気がしてくる。「四回戦目、やろっか」四回戦目にして私はようやく就職することができた。翻訳家である。


 晩餐の席。貴重な家族の語らいの席であり、なるべく早く済ませたい場面である。そんな席で母が「今日、誰かと遊んだ?」と尋ねてきた。嘘をついてもしょうがない、嫌味の一つ二つは言われる覚悟で私はイエスという意味の返事を返した。「いい傾向ね」と母は言った。責めないのか。「あんたは他人と関わろうとしてないから、悪いほうに人生が転がっていくのよ。世の中は他人で構成されているのよ」世間は他人で出来ている。当たり前だがその通りである。そして私は他人が好きではない。そりゃあ世間は私のことを嫌うわけだ。

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