2012年4月12日
※この作品は作者の日記ではありません。
4月12日(木)
「昨日は一晩中、泣いていたのよ私」朝、顔を合わせるなり母はそんなことを言ってきた。確かに普段と比べて目がくぼんでいるようだったが、そんなことを言われて私はどう反応すればいいのか、迷った。素直にごめんなさいなんて言ったら、神経を逆撫でしてしまうかもしれない。だからといって、ふーんそう、で済ませるのも気が引ける。結局私は、無言を貫いた。母は言いたいことを言い終えると、仕事部屋兼自分の寝室に入っていった。仕事をするのだろうか。それとも泣くために部屋に戻ったのだろうか。
そういえば母の仕事はまだ切られていないのだろうか。編集者との仲が改善されたという話はまだ聞いていない。このままでは仕事を干される、という話を聞いてからずいぶん経つ。まだ干されないのか、と尋ねてみようか。いや、それこそ神経を逆撫でする行為だ。私はおとなしく部屋で本を読んで過ごした。「読むのもいいけど書くのも忘れんなよ」頭の中の狼がそんなことを行ってきたが、そんな気分にはなれない。明日書くよ、と適当に応対しておいた。
晩餐の席で、母は「今の仕事が終わったら、次の仕事は恐らく来ないわ」と言った。母の仕事がなくなるということは、家に収入がなくなるということに……いや、私の福祉や父からの慰謝料も入ってくるから、収入がゼロになることはないか。しかし家計に対するダメージは大きいだろう。「狂人年金の手続きをして頂戴」と母は言った。「そのためには医師の診断書も必要になってくるから、次に病院に行った時に頼んでおいてね」と、白紙の診断書を手渡された。そうか。もう私が狂っているという事象に頼るしかないところまで来ているのか。