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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
240/366

2012年4月10日

※この作品は作者の日記ではありません。

4月10日(火)

 職業訓練所で私は大きなトラブルを起こしたわけだが、それをここに書き記したくないというのが本音である。しかし書かなければならない、書かなければきっと忘れてしまう。それか良い思い出として残ってしまう。それでは駄目なのだ、今日起きた出来事は嫌な思い出として頭に残っている今日のうちに書いておかなければならない。


 私は職業訓練所で大声を出して手足をばたばたと大きく動かしたのだ。いわゆる駄々というやつである。成人した人間が駄々をこねたのだ。私がやったことなので客観的にそれを見たわけではないのだが、それは非常に醜い光景であったに違いない。その証拠として、私はひとしきり暴れて職員たちに覆いかぶさるように取り押さえられたあと、「とにかく今日は帰りましょう、ね」と言われ、何も咎められることなく返されてしまった。私が狂っているという証拠である。狂っていない人間は我慢ができる。変な芸名にされたって耐えられるし、職業訓練所にだって通えるし、金を払ってでもビジネスホテルの風呂を掃除できるし、他人と簡単にコミュニケーションが取れる。


 激しく駄々をこねた一件は家に連絡が入っていたようで、マンションに帰った私に夕食は出されなかった。母も腹を立てていたのだろう。カロリー不足で体と頭に力が入らないが、こうして日記だけは書き付けている。今日の醜態を忘れないために。もしも狂いが治ったらこの日記を読んで爆笑できるように。今日の私は滑稽で醜悪だった。滑稽だの醜悪だのわざわざ難しい字を使っているあたり、まるで子供のようである。しかし子供は狂人ほど狂ってはいまい。対して老人がどうなのかは知らない。私は老人を経験したことがないからだ。

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