表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
24/366

2011年9月7日

※これは作者の日記ではなく、フィクションです。フィクション日記です。

9月7日(水)

 気力が出ない。何かをやるのも面倒だが、何かをやらないでいると気がさらに狂ってしまいそうで、しかし何かを始めるという行為には必ずストレスがついて回るものであり、その少しのストレスで狂いが極限に達してしまいそうで、空が青くて窓を開けると風が涼しくて叫んでみても家族の誰からの反応も無く、私の狂いは進行しているようだった。


 病院へ行った。病院へ行く日は、居間に下りると机の上に診察費と保険証、それから診察券と狂人者手帳が置いてある。私はこれらを持って病院へ行き、診察費以外のものは病院から帰ったら机の上において自分の部屋に戻る。すると、晩餐の時間までに何者か(恐らく家で仕事をしている母)がいつの間にか回収している。


 病院では、自分に気力が沸かない事を話した。「それなら、何か趣味を見つけると良い。お金がないなら、お金のかからない趣味を」読書にもインターネットにも飽きた。何か他にやるべきことは無いのか。すると医師はこう言った。「それは自分で探しなさい」丸投げされた、と少なくとも私は感じた。丸投げされた、と私だけは感じた。私だけだろうか、この発言を丸投げと判断するのは。


 家に帰り着くと、母と編集者の話し声が家の中から聞こえていた。だから私は逃げた。逃げても編集者は私の部屋に乗り込むかもしれない。そして何かを破壊するかもしれない。そう考えると編集者を家に置いたまま家を離れることがとても不安だった。しかし編集者に近づくのはもっと怖かった。


 本屋で立ち読みして時間を潰して、夕方近くになってから家に戻ってみてもまだ編集者は家に居た。というか、私がこっそり家の扉を開けると、今まさに家を出ようとしていた編集者と鉢合わせた。「やあ」そう言って編集者は私の腹を殴った。私は吐きそうになった。しかし、堪えた。「お、君、吐きそうになったね。君の胃液で僕の服が汚れたら、もっと殴っていたところだったよ」と、編集者は母と話していたのと同じトーンでそう言った。私は玄関で膝から崩れ落ちた。編集者はそんな私の脇をすり抜けて帰っていった。腹の痛みはなかなか引かず、晩餐を取ることも困難だった。だから今日も何も食べなかった。まだ痛い。気力が出ないとか言っている場合じゃないくらい痛い。痛いのは嫌だ。嫌だが、狂った私にそれを拒絶する権利はあるだろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ