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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
231/366

2012年4月1日

※この作品は作者の日記ではありません。

4月1日(日)

 朝、横になっていると、外国人男性の吹き替えのような声が聞こえてきた。「おい、ここに埋めろ」「いや、ここじゃない」「ここでいいんだよ」「駄目なんじゃないかな」「いいや、ここでいいんだ」目を開けてみると急にその声は収まった。一体何を埋めようというのか。私の幻聴だとするならば、埋められる対象は私である。埋められるほどに価値のない人間であることは、十分に理解しているつもりだ。


 今日も外へ出てみると、春一番のようなそうでないようなやや冷たい風が吹いていた。空が曇っていたせいだろう。あまりにも風が強く、それでいて小雨が降っていて、更に細かな砂埃まで舞っていたので、私はすぐにマンションに戻った。部屋に入ろうとすると、宅急便の制服を着た人間が二人、大きな荷物を持っているようだった。それを持って私の家の前に立っていた。何か家に用でもあるんですか、と尋ねてみると、「宅急便です」と見た目通りのことを二人組は名乗った。そして荷物をうちに届けに来た、ということも明かした。


 荷物を受け取り、二人で持っていた荷物を私一人で引きずるようにリビングまで持って行って開けてみると、そこには様々な大小の部品が収められていた。主な部品はネジと四本の棒、そして一枚の大きな板であり、まるで机の部品のようだった。組立説明書が同封されていたので、リビングで午後を費やして組み立てみるとそれは机になった。まさか一昨日の女子高生が送ってきたものではあるまい。宅急便は一日二日では届かないものだ。


 晩餐の時間になっても机はリビングに置きっぱなしになっていた。私に送られてきたものとは限らないからだ。「邪魔なんだけど」母は言った。しかし私に向けて送られてきたとは限らないものである以上、これを勝手に私の部屋に持ち込む権利を私は持たない。「邪魔だから、あんたの部屋にさっさと入れてくれない?」それはありがたかったが、晩餐にはキノコが混じっていた。食べたら倒れるだろう。だから部屋に机を持ち込むのは明日にしてもらいたい、と私は母に頼んだ。

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