表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
223/366

2012年3月24日

※この作品は作者の日記ではありません。

3月24日(土)

 雨が降っているから人の目も少なかろうと思い、図書館へ歩いていくことにした。人と目を合わせたくないから雨の中歩いていたというのに、人と向かい合ってしまった。相手は女子高生だった。制服を着ているから女子高生と呼んでいるのだ。宮崎に女子高生のコスプレをして歩き回っている人間がいるとも思えないし。そうして私一人が気まずいまま向かい合って歩いていると、全く唐突に、女子高生は倒れた。持っていた傘も転がって行ってしまった。


 近づいてみてみると、女子高生は榎本なごみそっくりだった。そのせいか、気が緩んだのか、気がとち狂ったのか、私は倒れた女子高生に話しかけた。すると女子高生は弱々しく応答した。「あ……大丈夫……ですから」そう言うと榎本なごみそっくりな女子高生はおぼつかない足取りで立ち上がり、傘を取りにも行かずに私に話しかけ続けた。「時々、抜けるんです。何かがふわぁーっと。そうすると、いつも倒れてるんです。今日は初めて、倒れてる時に話しかけられて、目覚めることができました」それから、ありがとうございました、とお礼まで言った。本当にあれは女子高生だったのだろうか。


 不思議に思いながら晩餐を口に運んでいると、榎本なごみが玄関から飛びながら戻ってきた。体は相変わらず半透明のままである。今日、どこかから抜けるような気分にならなかったか、と尋ねてみた。「そんなこと、ありませんでしたけど?」榎本なごみは言った。「もしかして、何かあったんですか?」何かあった、と私は言った。何があったのかは言わなかった。「教えてくださいよう」と榎本なごみはせがんだが教えなかった。なんとなくだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ