2012年3月23日
※この作品は作者の日記ではありません。
3月23日(金)
パソコン入力の仕事をやらなければならないと考えるとパソコンを見るのも嫌になる。だからここ数日小説を書いていない。長文はパソコンでなければ書けないのだ、腕が疲れるから。「仕事の練習だと思って小説書けよ」頭の中の狼は言う。しかしそういう考え方は出来ない。
「ちょっと友達に挨拶に行ってこようかと思うんです」榎本なごみが言った。行きたいなら行けばいい。「大丈夫ですか、行っちゃって」なぜか榎本なごみは念を押した。「私がいないと駄目なんじゃないんですか?」そんなことはない。「狼に責め苛まれてノイローゼになっちゃったりしませんか?」そこはどうにかする。「じゃあ、行ってきますね」そう言うと榎本なごみは玄関の扉をすり抜けて出て行った。
「いつもの幽霊は?」晩餐の席で母が尋ねてきた。友達に会いに行ったらしい、と伝えると、「捨てられたんじゃないの?」と母は悲観的な予測を口にした。「うちの家計って人に捨てられやすいのかもしれないわね。私もあの人に捨てられそうになってるし」それは捨てられたのではなく飽きられたのではないだろうか。と言ったら母は私を睨んだ。単に何も知らない奴が勝手に予測しただけだというのに、そこまで辛辣な顔になる必要はないではないか。