2012年3月14日
※この作品は作者の日記ではありません。
3月14日(水)
面接官は態度だけは優しかった。「うちは大丈夫ですよ」「無理はさせませんからね」しかしそれと最八日夫妻八日は別である。企業イメージというものがあるから。むしろ優しく接されたほうがさっさと追い返そうという意思があるのでは、と疑ってしまう。面接時間もそんなに長くなかったし、だいたい不動産屋で線画に色を塗る仕事ってなんなんだ。肝心なそこを質問したかったが採用に関わりそうだったのでできなかった。一体何のための仕事の面接を受けたのか。つくづく疑問である。
面接が終わったので本屋に寄って帰ることにした。一億円は結局ほとんど使いきれないまま、失効まであと二日となってしまった。とりあえずの贅沢としてハードカバーの本を五冊ほど買った。しかし図書館で借りた本も家にあるのでしばらく読まないと思う。ところで一億円が執行したら、一億円を使って買ったものはどうなってしまうのだろうか。もしかして使った分だけ請求されたりするのだろうか。だとしたら恐ろしい。そうでないことを私は祈った。
晩餐の席に狼が現れた。母は皿にチャーハンを盛り付けてそれを狼に与えた。狼はチャーハンを食べ終わると、「そろそろ小説書いてもらおうか」と言った。狼が言うのはそればっかりなのか。「それを言わせるために生み出したんじゃないんですか?」頭上の榎本なごみは言う。そういえばそうか。