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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年9月4日

※これは作者の日記ではありません。創作です。

9月4日(日)

 そういえば新学期が始まっていたのか。学校など、私とはかなり縁遠いものになってしまっているため、気づかなかった。気づく必要も無かっただろう。私がまだ正常で、学生と呼ばれる身分だった頃、新学期は……思い出したくないことに気がついた。新学期を迎える暗澹とした気分をまた味わいたくなど無い。だからこれ以上学生時代のことは思い出さないことに決めた。そして私は二度寝した。


 昨日の日記には「狂」の字が一度も出てきていないことに、今読み返してみて気がついた。昨日の私は正常だっただろうか? いや、ずっと狂っていた。狂ったままインターネットして狂ったまま図書館へ行って水をがぶ飲みして狂ったまま狂った人間に危害を与えようとたくらむ悪の担当編集に怯えて狂ったまま何時間も立ち読みしたのだ。何の実もない一日だった。きっと今日もそうだ。今日やったことといえば、電話を取ったことくらいだ。


 大雨が降っていたので、今日は外に一歩も出なかった。晴れていても用が無ければ出ないが。そして電話があった。母がいつまで経っても出なかったので私が居間に下りて受話器を取った。榎本なごみからだった。「ん。あなたが取ることは予想できていたよ」榎本なごみは預言者なのだろうか。「違うよ。ところでそっちは大丈夫? 台風近づいてるらしいけど」榎本なごみの家にも台風が近づいている、ということになるだろう。「私の家は大丈夫。住んでないから」どういうことなのか分からなかったので、私は尋ねた。「だから、住んでないから。雨とか平気なんだ」分からなかった。


 珍しく母に話しかけられた。「夕飯、何か食べたいものとかある?」冷蔵庫の中にあるもので作れるもの、と私はリクエストした。その日の夕餉は、卵とトマトを混ぜ合わせて炒めたものと、焼いたキノコが出た。私が順調にキノコを食べ続けているから、母は無視をやめたのだろうか。とにかく、私は今日もキノコを食べた。

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