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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
202/366

2012年3月3日

※この作品は作者の日記ではありません。

3月3日(土)

「あなたの妹さんと、仲良くなりたいんですけどね」榎本なごみが言った。昨日の「ほざくな、幽霊が」発言が尾を引いているらしい。しかし突き放されてもそのまま距離をとることなく近寄っていこうとするとは。人と仲良くできる人間というのは、こういうところが私と違うのだろう。


 私には友達がいた経験がほとんどないので、友達作りのためのアドバイスを榎本なごみに与えることは出来なかった。そこで、母に尋ねてみてはどうかと助言した。母は私と違って正常な人間の世界で生活している人物だ、友達の一人や二人くらいいるだろう。そう言うと榎本なごみは母の部屋に物理的に飛んでいった。数分後、帰ってきた榎本なごみは「ダメでした。お母様も友達がいないそうです」と言った。「友達を作らなくて済むから、今の仕事を選んだんだそうです」翻訳かという仕事は一人で成り立つものだったっけ、と私は考えてみた。


 そんなことはないだろう。晩餐の席で、私は母の友達いない発言を撤回させようとした。本を出版することは一人では不可能である。編集者との打ち合わせ、校正者との添削合戦、印刷者への義理、書店への挨拶回り、そういうものが一切ないとは言わせない。「でも、その中に友達は一人もいないわ」母は言った。なるほど、そういうことであれば納得できる。私も社会人時代、仕事仲間はいた。しかし、それは友達ではなかった。

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