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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
201/366

2012年3月2日

※この作品は作者の日記ではありません。

3月2日(金)

 早くも一億円失効の期限が約半月後まで迫ってきている。この数日を幻覚のせいで無駄にしたからだ。私は病院へ行かなければならない。そして早急に処方箋をもらい、それを薬と交換して飲まなければならない。そうしなければ私の人生は終わりだ。現実が認識できなくなって生活は終了してしまう。しかし現実が認識できたからといって、これまでの人生が幸せだったとも思えないし、幸せになれるとも思えない。生きることと楽しいことがイコールでないことくらいは、人生経験の少ない私にも分かっている。


 診察が行われた。さっさと終えて欲しかったのだが、なぜ前回来なかったのかを尋ねられた。私は素直に、つい忘れていたので、と答えた。「そりゃあいけない。薬が切れて大変な目に遭ったでしょう」今まで薬が切れてもこんなことはなかったのに、不思議である。「それはね、あなたが薬に適応してきた証拠ですよ」中年男性の医師は言う。それって良いことなのだろうか。私にはそうは思えなかった。それはともかく、診察をやっと終えた私は、待望の処方箋をもらって薬局に寄って薬をもらい、それを帰る途中の自動販売機のコーヒーで胃に流し込んだ。幻覚が収まった、かどうかはわからない。病院で処方される薬は遅効性のものが多いから。


「今日は暖かかったですね」静かな晩餐の席に榎本なごみの声が響いた。誰も談話など望んでいないのに、どうしてこの人物は場を盛り上げようとするのか。「そこまで言うことないじゃないですか。ねえ?」と、榎本なごみは妹を向いて言った。同じ少女と呼ばれる年齢である妹でれば共感してくれると思ったのだろう。「ほざくな、幽霊が」妹は吐き捨てるように行った。榎本なごみは固まった。

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