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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
197/366

2012年2月27日

※この作品はフィクションであり、実在する人物・団体・地名とは一切関係ありません。

2月27日(月)

 駅の売店で売られていた新聞が月曜を指していたので今日が月曜日であることを思い出した。それじゃあどうして昨日は病院に行けていたのだろうか。病院は普通日曜は休みじゃないのか。待合室にまで人がいた。そういう病院なのだろうか。それとも病院自体が狂いが見せた幻覚だったのだろうか。とにかく私は駅のホームで電車を待ち続けた。目的地は宮崎である。時計を見てみると、次の電車まで40分だった。


 否かの電車は本数が少ない。ようやく到着した、急行なのに二両しかない電車に乗って、私は一路宮崎を目指すことにした。ところが、車内放送で「この列車は宮崎駅を通過いたします」と連絡が入った。私が乗ったのは宮崎方面行きの電車のはずだ。それともあくまで「方面」行きであって、そこ自体に行くわけではない、ということなのか。まぎらわしい。


 結局宮崎駅の最寄駅で降りた。そこは宮崎駅をひとつ通過したところにある駅で、いつも通っている病院に近い駅だった。幸いなことに歩こうと思えば宮崎駅まで歩ける距離だった。しかしこのまま家に帰るより、まず薬を手に入れるのが先決だ。そう思った私は、家の前に家より近い病院を目指すことにして歩き始めた。


 迷った。田舎の道は大通り以外は狭苦しく見通しが悪く入り組んでいるため、標識の多い都会の道路より迷いやすい。それに時計であればランドマークと呼べる背の高い建物があり、それを目印にして大体の方角の検討を付けることもできる。田舎はそれができない。これだから田舎は。宮崎ってやつは。


 瞬く間に夕方になってしまった。いつも通っている病院に今到着しても、きっと午後の診察時間は終わってしまっているだろう。あの病院は午後の診察時間が短いから。こうなったらもう家に帰るしか道はない。しかし私はまだ道に迷っていた。どう曲がれば宮崎駅に、宮崎駅から歩ける距離にある家にたどり着けるのか分からない。「あっちじゃないですか?」上空から榎本なごみの声が聞こえた。そうだ、榎本なごみに空高く飛んでもらって目的地を探してもらえば良かったではないか。どうして昨日は登場しなかったのか。「いましたよ、ちゃんと昨日も」


 榎本なごみのナビゲーションのおかげでついに夜遅く、私は家に帰り着くことができた。今度は階数と部屋番号を間違えずに扉を開けた。するとそこには何もなかった。どうして何もないのか。榎本なごみに尋ねてみた。「あなたは狂っているんですよ? まともに現実が認識できるわけないじゃないですか」それもそうか。私は何もない家に入った。

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