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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2012年2月24日

※この作品はフィクションであり、実在する人物・団体・事件とは一切関係ありません。

2月24日(金)

 昨日と同じホテルで朝を迎えた。本を買ってこなければ退屈でならないな、と考えながら朝のニュースをざっと眺めていると、宮崎でゾンビ騒ぎがあった、という非現実的なニュースが報道されていた。マスコミも落ちたものである。こんな報道の仕方でいったい誰がこのニュースを信じるというのか。証拠映像が流されていたが、きっとこれを見た誰もがCGだと信じて疑わないことだろう。


 それより注目すべきは地名である。ゾンビ騒ぎがあったのは宮崎、と報道されていた。ではなぜうちの近所ではなにごとも起こっていないのか。私の住所は宮崎のはずである。現在滞在しているのも、宮崎のホテルである。確か東北には宮崎という地名があったのを地図で見たことがある気がするが、だとしたらまず県名を先に伝えるだろう。それなのにニュースは、宮崎でゾンビ騒ぎがあった、と報道していた。そうすると、ちょっと待て、私は飛行機でどこからどこまで飛んだんだ?


 もしかしてこの家出の原因も狂いが見せた大規模な厳格だったりするのか。だとしたらどこからどこまでが厳格なのか。分からない。榎本なごみと話している現象は幻覚か? 宮崎へ飛行機で行ったことは幻覚か? 榎本なごみのゾンビを見たのは幻覚か? 今見ているニュースは幻覚か? 宮崎という地名は幻覚か? どうしてこんなにも世界が狂っているんだ? 


 ああ、そうか。薬を急に止めたから、私が狂っているのか。


 私はスーパーのレジを通り過ぎた先にある商品を詰めるスペース(正式名称は知らない)にいる。目の前には赤くて白い飯店の入ったキノコを満載したレジ袋が自立している。私はいつのまにスーパーまで来たのか。今何時だ。

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