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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2012年2月22日

※この作品はフィクションであり、実在する人物・団体・地名などとは一切関係ありません。

2月22日(水)

 昨日の続き。ゾンビパウダーを墓の土にふりかけてみたが、しばらく何も起こらなかった。やはり死体を掘り出さなければだめか、だとしたらスコップを買わなければならないのでまた明日ということになるな、と思っていたら土が少し動いた。もしや、と思っていると土から腐った手のひらが飛び出した。そのまま腐った人間が地面から這い出てきた。「あれ?」榎本なごみはそれを見て不思議がった。「これ、私の死体、のはずなんですけど……」しかし、その死体の幽霊である榎本なごみは宙に浮いている。それにしてもゾンビというものは気色が悪い。なんとかならないのか、と言いたかったが、ゾンビに鼓膜はないだろうし、聞いてくれたとして相手がどうしてくれたら良いものか。私たちはこれを放置して墓地を立ち去った。


 そのままホテルに向かい、飛び込み一泊で部屋を取り、昨日の分の日記を書いた。榎本なごみは宙に浮きながら不思議そうな顔を続けていた。「ゾンビは本人の意思と関係なく動けるのか……盲点だったなあ……もったいないなあ……」私に対して何か言っておきたいことはないか、と榎本なごみに訪ねてみた。「えーっと、ごめんなさい?」なぜ疑問形なのか。


 翌朝、ホテルから空港へ向かうタクシーに乗ってみると、渋滞が起こっていた。渋滞の先からは「ゾンビだ、ゾンビが暴れてるぞ!」という悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきた。「私のゾンビですかね」と榎本なごみが尋ねてきた。それ以外考えられないだろう。私は渋滞の解消を待った。


 渋滞の解消には数時間を要した。帰りの飛行機に乗れたのは午後になってからだった。そして地元に到着した私は、家に帰りたくなかった。家に帰れば母が待ち構えている。私の家出に激怒しているであろう母が。私は携帯を持たされていないので、この気持ちを伝えることすらできないし、マンションの固定電話の番号はまだ覚えていないから公衆電話を使うこともできない。それに大体、帰りたくなかった。母が怖かった。ゾンビなどより、数段も。

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