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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年9月2日

※これは作者の日記ではありません。創作です。創作に決まっています。

9月2日(金)

 今、起きたところである。今が現実なのか夢の中なのか、狂っている私には判断できない。しかし机の上には壊れた腕時計が置かれている。昨日、編集者に腕時計を破壊されたことは事実のようである。いや、その事実を認識している私も夢の中にいるのかもしれない。そう考え出すと混乱してきた。だからこれ以上気にしないことにして、今日、起きているか寝ているかの間に起きた出来事をここに書く。


 榎本なごみが訪ねてきた。彼女は誰に案内されるでもなく、自発的に、言い換えれば自分勝手に家に上がりこんできた。そしてそのまま階段を上って、私の部屋に入った。彼女が最初に気にしたのは壊れた時計である。「壊しちゃった?」と、榎本なごみは尋ねた。「違う、昨日母の担当編集者に壊されたのだ」と、私は真実をありのまま伝えた。「そっか」榎本なごみは怒りもしなかった。自分がプレゼントしたものが勝手に壊されたというのに。「負けちゃダメだよ。狂っちゃダメだよ」と榎本なごみは言った。何に負けるというのか、私が狂ったところで何の不都合があるのか、私には納得できなかった。しかし私が何を言い返したのか、ここで記憶が途切れているので分からない。とにかく、榎本なごみは晩餐の時間より前に帰った。それだけは覚えている。


「キノコは食べないほうがいいよ」と、どのタイミングで言われたのか思い出せないが、とにかくそう榎本なごみに言われた。「食べなくても死なないよ。死にそうになったら警察に駆け込めばいいよ」いいや、食べなかったら私は死ぬ。晩しか食事を出してもらえていないのだから。私はそんな感じの反論をした、ような気がする。それに対して榎本なごみがどんな反応を返したのか、それも思い出せない。きっと昨日キノコを馬鹿食いしたせいで、記憶能力が狂ってしまっているのだろう。


 今日の晩餐の内容も思い出せない。しかし、きっとキノコが入っていたのだろう。今も私は狂っているから。

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